概要
神奈川県湯河原町のJR湯河原駅前の広場。湯河原は古くからの温泉場として知られ、夏目漱石や国木田独歩の小説の舞台となるなど明治以降の文豪に親しまれた歴史を持ちます。
立地的に箱根と熱海という国内外を代表する温泉場に挟まれながらも、純和風旅館を中心とした情緒ある趣と静けさが古くからの温泉ファンを惹きつけてきました。
湯河原は箱根に続く国道沿いに旅館群が伸びて行き、奥へ行くほど自然や静けさが増していくそんな魅力を持った温泉街です。
JR湯河原駅はその街の玄関口でありましたが、どこか旅情感に乏しく、使い勝手も良くない状況の改善や温泉ブランド向上の観点から新たな広場の整備が計画されました。
隈研吾建築都市設計事務所により基本計画がまとめられ、2017年に完成。
設計と施工会社
設計は隈研吾建築都市設計事務所。湯河原は純和風旅館を多く抱えるなど熱海と比較して和のイメージとなる要素が多くあり、新たな和建築の路線に重きをおく隈研吾事務所と親和性が高いと言えます。
隈研吾事務所はこれまで駅舎としては「JR足柄駅(足柄駅交流センター)」、「JR宝積寺駅」や「京王高尾山口」などを設計。また、山手線の新駅「高輪ゲートウェイ駅」が暫定開業しています。
東京都内の近作では「スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京」、「根津美術館」、「明治神宮ミュージアム」、「歌舞伎座タワー」、「東京中央郵便局JPタワーKITTE」など多数の物件で精力的な活動が続けられています。
施工は駅舎や線路など電車に関するインフラを得意とする「東鉄工業」が担当しました。
建築の特徴
以前の駅前の分析では「温泉街の駅という顔に魅力に感じられない」、「庇はあるものの暗く、乗降時に雨に濡れてしまう」などのマイナスイメージがありました。
そのソリューションとして「明るい大屋根」、「温泉街の魅力を伝えるツール」などを盛り込んだ案として、「ガラスの外皮を透過した中に内皮として木を見せる大屋根」、「手湯という目新しい温泉ツール」が提案されました。
この屋根のデザインは「馬頭町広重美術館」のエントランスで使われている手法をアレンジしたものと基本計画に説明がありました。ルーバーの間隔などは異なりますが確かに同じ路線です。
駅の改札や駅前に高い天井の空間があることによって、移動してきた人あるいは移動する人の受け止められる空間、駅と街のフィルターとしての役割を持たせることが可能になります。
これまでの駅の課題を解決するともに場の特性を取り込み新たな付加価値を与える注目の駅です。
アクセス、見学
JR東海道線湯河原駅下車。小田原駅より15分程度。東京駅から90分程度。オススメは「踊り子号」か「東海道線グリーン車」でゆったりと相模湾の風景を見ながら行くことです。
駅前には駐車場も整備されました。30分100円で最初の15分は無料です。