“隈研吾設計”富岡市役所

概要

群馬県富岡市の新市庁舎。明治時代に官営製糸場「富岡製糸場」が創業。中山道の宿場町としても賑わいを見せていました。

この地にあった当市役所は「富岡製糸場」からは徒歩10分程度、上信電鉄「上州富岡駅」から徒歩数分の場所に位置。

老朽化や市町村の合併などの理由から建て替えが計画されました。広く市民の声を受け入れながら、公募型プロポーザルにより設計者を決定する流れを作りました。

駅前に市役所機能を移転する事例も増えつつありますが、もともとの庁舎が駅前にある点で駅集約型の都市と言えるます。

行政や議会の場であるだけでなく、災害時防災拠点、駅前の活性化や各イベント開催など多目的な庁舎として「市民とともに進化する安心安全な100年庁舎」を目指しています。

設計と施工会社

上州富岡駅から富岡製糸場へ抜ける動線を敷地内に確保し、この動線を中心にヒューマンスケールの建物群を配置、展開する手法などが評価され、隈研吾建築都市設計事務所が選定されました。

隈事務所は庁舎の実績も多く、豊島区庁舎、長岡市庁舎、檮原町庁舎などをこれまで手掛けています。

設計公募には約50社が参加し一次通過した5社の公開型プレゼンテーションにより争われました。次点は千葉学建築計画事務所。

施工は地元富岡の「佐藤産業」。道の駅甘楽や地元の小中学校など数多くの物件の実績を持っています。

建築の特徴

「しるくる広場」を中心に行政棟と議会棟を90度振って分割配置して囲み、棟の谷に向かって広場を伸ばしていくことで、富岡製糸場へと延びる動線を作り出し、奥へ人々を引き込んでいきます。

庁舎の教科書的には行政エリアは下階、議会エリアは上階というプランニングが一般的ですが、街と建物のスケール感を合わせるためあえて分散配置してます。

建物は多面的な屋根を持ちつつ、越屋根を積極的に使っています。役所的な圧迫感を和らげるとともに、日射制御、通風など環境面でも有利に働かせる計画です。

戸建住宅で活用するような環境機能を取り入れ、機械的なエネルギー消費を積極的に削減しようという面でも100年庁舎を意識していることが分かります。

事実、富岡製糸場という150年近い歴史を持つ施設が現存しているなかにおいては、100年という数字だけを見れば決して過大ではないですが、現代的な手法に頼りすぎると陳腐化するのも早くなりえます。

評価は100年先に預けるのではなく、定期的な事後評価の積み上げが大切だろうと思います。どう使われたのか、どのような設備面に課題があったのか、どの点で評価が高かったのか、掛かったメンテナンス費用などの分析の積み上げこそに100年先のあり方が変わってくるのではないでしょうか。

広場では多くのイベントに対応。庁舎というよりは小学校のスケール感。
右下方向が上州富岡駅、左上方向が富岡製糸場。谷状の建物配置に広場が割り込んでいき、動線を作り出している。
議会棟と行政棟の狭間から駅方向を見る。
東屋から行政棟入口方向を望む。軒天井や壁の化粧材に合板を多用している。メンテナンスは必要だろう。
行政棟入口付近より議会棟を望む。

アクセス、見学

上信電鉄上州富岡駅から徒歩数分。駅と製糸場の見学拠点としてもちょうど良い位置にあります。2018年に完成した「富岡商工会議所」も徒歩圏内。