“世界遺産の最寄駅”上州富岡駅

“世界遺産の最寄駅”上州富岡駅

2019年4月8日

概要

群馬県富岡市にある上信電鉄の駅。高崎と下仁田を結ぶ中間地点に位置。この駅舎は世界遺産「富岡製糸場」の最寄駅として多くの観光客を受け入れています。同時に近隣住民が集える場としての役割も担っており、観光と地域交流スペースの接点としての機能を持たせています。

設計と施工会社

世界遺産を目指す富岡製糸場への玄関口として、城下町としての魅力の確保や老朽化改善などを背景にコンペによって設計者が「武井誠+鍋島千恵/TNA」に選出されました。

施工は地元富岡の「佐藤産業」。道の駅甘楽や地元の小中学校など数多くの物件の実績を持っています。

建築の特徴

建物は一枚の長く薄い大屋根(88m)を浮かせており、その下の広く長いスペースに改札や待合室、観光案内、トイレ、自転車置場など必要最小限の機能を点在させています。面積の多くは半屋外となっています。

観光客からすればこの広い門が街の玄関口であり、地域からすればコミュニティを形成する多機能なスペースと言えるかと思います。

構造は「鉄骨煉瓦積造」。富岡製糸場の「木骨煉瓦積造」という当時の最先端の手法を現代的な文脈で取り入れています。

鉄骨造の常識からすると柱と柱の間にブレースという斜め材が入るのですが、この建物の外観には見当たりません。屋根と柱の交点となる部分にブレースが見えないことがこの屋根の浮遊感をより高めています。煉瓦積みの中にある隠されたブレース材に煉瓦で被覆・補強された混構造となっており、単なる仕上げ材ではない煉瓦建築です。

この革新的な技術が150年近く前に作られた富岡製糸場に通づるデザインとして評価されています。

フラットな大屋根が高く浮かせてある。奥に見える赤い屋根はホームの屋根。ホームと完全に遮らず電車や人の気配を残している。
中にブレースがあり煉瓦により補強された壁。ベンチも兼ねている。レンガの色は必ずしも富岡製糸場に合わせることなくベージュを基調としている。
屋根下より改札・待合室方向を見る。確かに両方向に煉瓦積みがあることから構造体としての要素を持たせているのだろう。
改札と待合室。設計者が言う「身の丈にあった」サイズというのが伝わってくる。
待合室インテリア。木と煉瓦の相性の良さは言うまでもなく美しい。
繭をイメージしたと明確に分かる時計。設計者の意図が通じている。市役所にも時計はあったがミラータイプのいかにも、という感じのものだった。
既存のホーム屋根。
廃レールをダブルで使い屋根で開く。古い時代のものは無駄がなく合理的。

アクセス、見学

JR高崎駅より直結の上信電鉄高崎駅より40分程度。本数は少なめなので余裕を持ったほうがいいでしょう。富岡製糸場の入場券と高崎往復のチケットがお得です。

駅舎は改札外のほとんどが半屋外のため時間制約はありません。