“手塚建築研究所設計”富岡商工会議所

“手塚建築研究所設計”富岡商工会議所

2019年4月10日

概要

群馬県富岡市にある商工会議所会館。「富岡製糸場」と「上州富岡駅」の中間に位置。商工会議所という建築を通し街の魅力の向上を目的として旧国道沿いに建築。ホールや会議室を貸与する機能を持ちます。

富岡製糸場は2014年に世界遺産登録された直後は多くの観光客が押し寄せたものの、年々減少傾向にあります。製糸場だけではなく、街全体としての醸成・魅力向上が必要とされている時期に差し掛かっており、その意味で本建築が発信する意味合いは大きいものがあります。上州富岡駅と富岡製糸場を結ぶエリアには本建築を含む新たな建築が誕生しており、「富岡市庁舎」(隈研吾建築都市設計事務所)、「上州富岡駅」などが注目されています。

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"世界遺産の最寄駅"上州富岡駅

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設計と施工会社

設計は手塚建築研究所。手塚貴晴、手塚由比両氏が共同主宰しており、個人住宅や幼稚園などの小規模建築を主力としたアトリエ系事務所。「彫刻の森ネットの森」、「越後松之山 森の学校キョロロ」、「ふじようちえん」や「勝林寺」、「十日町産業文化発信館いこて」など木質空間を中心として多くの実績を有しています。施工はタルヤ・湯川 新富岡商工会館建設工事共同企業体。

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建築の特徴

旧国道沿いに面した間口15m程度に対して奥行きが約70m近くある細長状の形状の敷地。間口には古い既存の蔵があり、これをコンバージョンして残し、敷地の奥行き方向を目一杯使い新たな建物を建築しています。上州富岡駅が間口の長さを生かしたワイドな立面になっているのとはまるで対照的な条件です。

旧国道側は既存の蔵を合わせて、旧来の趣を残した外観を維持しつつ、奥行き方向には大小6つの切妻屋根が連なっています。構造はベイマツ集成材を使った木造建築で、山形の屋根には「富岡製糸場」が当時最先端の技術として用いた「トラス」構造を現代的に踏襲したデザインとなっています。

奥行き方向の窓面には富岡製糸場でも使われた「かいこ」を育てる「まぶし」を連想させる格子が使われています。これはデザインだけでは無く、日射や視線制御のツールとしても機能していることが読み取れます。

右側が新築。左側の蔵は改修。間口からでは想像できないほど奥行きが長い。
お色直しされた蔵。漆喰だと思われる仕上げは白く眩い。
裏手に面した市道からの眺め。こちらに来て初めて屋根形状が把握できる。
建物と並行して一定幅の舗装路を確保することで、建物立面が視覚的に見えるようにし、採光も獲得している。格子状のサッシに木製の「まぶし」をはめ込んでいる。

アクセス

上州富岡駅より徒歩10分程度。