概要
まつだい雪国農耕文化村センター農舞台は新潟県十日町松代にある現代美術を収蔵する美術館・郷土資料館。
旧松代町は米作を中心とした農業が盛んなエリアで、山間部ということもあり国内有数の棚田の里としても知られています。「星峠の棚田」、「儀明の棚田」、「蒲生の棚田」などが有名。
本施設は2003年の「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」に合わせて建築され、北越急行松代駅の目の前に現れた白色のインポートデザインは大きな注目を集めました。
十日町を中心としたトリエンナーレは約3年毎に開催され、現在までに7回開催されています。開催期間以外も本施設を含み、十日町広域圏では様々な施設や公共空間などで常設展示が継続されています。
設計
設計はMVRDV。オランダに本拠を置く建築設計ユニットです。ヨーロッパ圏全域を中心として活動。日本国内では本作品が初となり、その後、東京・表参道の商業施設「GYLE(ジャイル)」を設計。MVRDVは創設メンバーの頭文字、Winy Maas、Jacob van Rijs、Nathalie de Vriesからネーミングしています。日本人では早稲田大学教授で建築家の吉村靖孝が在籍していました。
建築の特徴
白い筐体にカラフルなガラス張りのフラットスラブが宙に浮き、田んぼという松代の普遍的な風景と現代的な白いボリュームが上下方向で一定の間隔を保ち、均衡している印象を受けます。
航空機のタラップようなアームが多方向に延び、地面と接する数少ない「接着点」となっています。あたかも、遠い海外から洗練された飛行体が新潟県の山深い農村エリアにランディングしたかのようなインパクトを周辺に与えています。土地に合わなければ、いつでも飛び立てるかのようなそんな印象さえ覚えますが、この地に就いてもうすぐ20年が経とうとしています。
この浮遊するデザインは見た目だけではなく、熱い夏は日除けスペースとして、また雪深い冬には雪避けスペースとして、様々なイベントに活用できます。
高度な構造設計に裏打ちされたデザイン
このようなデザインの建築は、高度な構造理論や技術の裏付けが必要となります。本建物の構造設計は佐々木睦朗氏によるもの。佐々木氏は国内を代表する構造建築家の一人で、伊東豊雄氏、SANAAのほとんど物件の構造設計に携わり、国内を代表する建築である「せんだいメディアテーク」、「金沢21世紀美術館」などの建築も佐々木氏の構造作品となります。世間的には意匠設計者の看板が表に出ることが多いですが、建物の「軸」の部分は構造設計者の技術に支えられています。伊藤氏やSANAAの作品もそうですが、とりわけ、既存の枠にとらわれないような新たな形態を生み出す上で、建築構造的に成立させる上では、意匠デザインだけが単独で進めることはできません。計画段階から双方が意匠と構造のアイディアを出し合いながら、作り上げていくものです。
この建物は「ステップ」のエントランス部分だけが地上と接しています。まるで蜘蛛が手足だけで自立しているかのようなフレームによって成立しています。通常であれば、下のピロティの部分には多数の柱が必要となり、設計のコンセプトを大きく阻害することになります。これを「蜘蛛の足フレーム」によって全体を持ち上げ、支えることが可能になっている点で構造デザインが建物のデザインに大きく寄与していることが読み取れると思います。
アクセス
電車は北越急行ほくほく線松代駅から徒歩1分。車では関越自動車道六日町ICより約30km、約40分。道の駅まつだいふるさと会館から徒歩1分。