概要
長野県飯山市にあるホール兼市民文化施設。旧市民会館の老朽化や利用状況の改善を目的として、また、2015年に延長した北陸新幹線・新飯山駅の開業にともなう駅前の活性化のとしての役割も期待され、2016年にオープンしました。
飯山は縦に長い長野県の最北に位置。新潟県に接する「北信州」エリアになります。市内には戸狩温泉があり、西には斑尾山、東には野沢温泉と北信エリアにある国際的な観光スポットの玄関口でもあります。
設計と施工会社
設計は隈研吾建築都市設計事務所。文化・芸術と交流・賑わい機能という二つの要件が求められた公募型プロポーザル方式で最優秀賞に選定されました。次点は梓設計となりましたが、2つ事務所は「新国立競技場」の設計で共同設計者としてパートナーとなっています。
内部空間の自由度の確保や冬季の厳しい気候風土対応、対災害機能などの条件をクリアしつつ、木や和紙といった地場産材の使用や内外の表裏がなく、風土的親和性が得られやすい点などが評価されました。
隈事務所は外観のデザインが先行したイメージが強いように思われますが、必要条件の取り込み方や地場産材の使い方、柔軟な利用形態など設計プロポーザルに対して合理的かつ斬新なアプローチで攻められる強さを持っています。
長野県内では「奥社の茶屋」(長野市戸隠)、「snow peak LAND STATION 白馬」(白馬村)などがあり、近隣県では「長岡アオーレ(長岡市庁舎)」(新潟県長岡市)、「富岡市庁舎」(群馬県富岡市)があります。
東京都内の近作では「スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京」、「根津美術館」、「明治神宮ミュージアム」、「高輪ゲートウェイ駅」、「歌舞伎座タワー」、「東京中央郵便局JPタワーKITTE」など多数の物件で精力的な活動が続けられています。
"隈研吾"snow peak LAND STATION 白馬 連峰と呼応する屋根と最高の景色を切り取る大開口
施工は清水建設JV。県内では「小諸市庁舎」、「茅野市民館」などの大型物件を手掛けています。
建築の特徴
約500席の大ホール、170席の小ホール、多目的ホール、複数の小ルームからなり、コンサートや地域のピアノ演奏会などに幅広く対応。
ホールの楽屋はルームとして地域活動の場としても活用でき、ナカミチと呼ばれる通路自体も展示スペースとして貸与しています。
ホールの大小だけではなく、多目的で余すところなくスペースを活用している点で施設全体がフレキシブルと感じられる建物です。
外観には長野産のカラマツが多様され、地産地消が実践され、大ホールは非常に耐久性のあるコールテン鋼が仕上げ材として用いられています。カラマツの親和性は言うに及びませんが、サビ色のコールテン鋼も地域の山に呼応するデザインです。
錆は一般鋼材では劣化の象徴として見られますが、コールテン鋼はもともと表面に錆が生じており、これ自体が風味のある表層を作り出しています。特徴として経年で明るい茶色からこげ茶色に変化するため、今後の色合いの変化が楽しみな作品と言えます。
多面な形態と親和性のある素材の組み合わせで全体の外観をまとめつつ、内部はカラマツやヒノキの集成材を使用しています。
広さのある路地は3つの出入口を明快に繋ぎ、分かりやすいプランニングとなっています。建物内に外部から引き込まれる通路を確保することで街の中の経由地として人々を取り込み、賑わいを生み出すというコンセプトが見てとれます。
アクセス、見学
JR飯山線飯山駅、北陸新幹線飯山駅より徒歩2分程度。駐車場あり。見学は開館時間であればホールなどを除いて可能。