“隈研吾設計”長岡アオーレ(長岡市庁舎)

“隈研吾設計”長岡アオーレ(長岡市庁舎)

概要

長岡アオーレは新潟県長岡市にある市庁舎・アリーナからなる総合公共施設。新潟県長岡市は中越に位置する人口約26.5万人の都市で、「長岡まつり大花火大会」は毎年8月上旬ごろに行われる日本三大花火(大曲、土浦)のうちの一つとして知られています。

旧庁舎の耐震性不足や老朽化、面積不足を解消するため、市庁舎の建替えが検討されてきました。長岡市は市町村の合併により規模が大きくなってきた背景もあり、複数の分庁舎が広く点在していたため行政効率化の観点で課題を持っていました。

大手通り庁舎(フェニックス大手)、市民センター庁舎と合わせ、駅近辺に集約化することで行政機能面の効率化を図った「コンパクトシティ」の概念も取り入れ、市の中心部に市庁舎と同時に、様々なイベントや人を呼び込むスペースを作り出すことで「ハレ」の場を市民に提供しようという試みです。

大手通りから望む。ナカドマに誘引しやすいデザイン。

事実、来場者数は年々上昇し続けており、駅前市庁舎の先駆的事例として取り上げられることも少なくありません。

設計

設計は隈研吾建築都市設計事務所。国内外で多数の建築を設計、甲信越内の作品としては飯山市の「なちゅら」や長野市戸隠の「奥社の茶屋」などがあります。

"隈研吾"飯山市文化交流館なちゅら

概要 長野県飯山市にあるホール兼市民文化施設。旧市民会館の老朽化や利用状況の改善…
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戸隠神社奥社の入口にある隈研吾"奥社の茶屋"

概要 長野市戸隠にある茶屋。戸隠神社は戸隠山の麓に、「奥社・中社・宝光社・九頭龍…
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市庁舎としては「群馬県富岡市庁舎」や「高知県梼原町総合庁舎」などを手掛けています。

"隈研吾"富岡市庁舎

概要 群馬県富岡市の新市庁舎。明治時代に官営製糸場「富岡製糸場」が創業。中山道の…
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建築の特徴

市庁舎、市民協働スペース、アリーナからなる複合施設を「ナカドマ」と呼ばれる大屋根で覆われたスペースによって、繋がれている点が最大の特徴です。

ナカドマ。十分な広さがあらゆるイベント開催を可能にしている
ナカドマ。大手通り方向をみる。ズラしながら奥行き感を与えている。

まず建物が主役としてあり、その周辺あるいは付属として外部空間があるような造りがこれまでの庁舎の一般解でした。しかしアオーレでは、「大屋根空間ナカドマ」を主役として捉え、その周囲に市庁舎、アリーナ、市民協働スペースを配置するという「反転」の発想により、建物側がナカドマに付属するかのような配置となっています。

ナカドマでは様々な街のイベントスペースとして活用。物産展や展示会、結婚式まで開催可能で誰でも気軽に入り参加できる「ハレ」の場として提供されています。

アリーナは5,000人が収容可能な大型施設で大相撲の開催や新潟アルビレックスの本拠地として利用されています。アリーナとナカドマを繋ぐことによりさらに大きな活用も可能とされています。

市庁舎としても「開かれた市役所」が実践されています。ナカドマや駅に通じる通路には利便性の高いサービス部署が入り、見えやすさと親しみを感じることが出来ます。市議会議場が1階にあることも特徴と言えます。

議場は市役所機能の中では最も規模の大きい室となることから、通常、建築計画や構造面において、上層階に充てがうことが標準解答とされていました。しかし、アオーレでは議場をナカドマに面した1階に持ってくることで、視覚的にも透過性を与え、開かれた議会も実践しています。

ナカドマを含む外観には木を縦使いにしたパネルが張り巡らされています。地元産の杉により製作されたこのパネルは、市松(いちまつ)状として、立面に対して「くの字型」に取り付けられています。「行政」と「市民」の関係が単に大きい固まりで分割されるのではなく、「市松模様」のように、よりコンパクトなコミュニティで相互関係を作り出す、という理念をデザインしたものです。

このパターン化したデザインが至る箇所で用いられ、まとめられ、正に「オモテ・ウラ」の無い建築が作り上げられています。

地元産の杉パネルが市松により貼られている。プランターのように植栽がまとめられている。
イベントによってパネルに光が上手く映り込み季節によって表情を変えることができる。

アクセス、見学

JR長岡駅、より徒歩2分程度。ナカドマは24H見学可能。