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概要
道の駅「常総」は茨城県常総市の道の駅。2023年4月28日のオープン。キャッチフレーズは「食農楽のむすびまち 輝くえがおをつむぐ駅」。
常総市は2006年に水海道市に石下町が編入され常総市となりました。市を南北に流れる鬼怒川や小貝川といった大河川を背景として水運によって発展してきた歴史を持っており、豊富な水資源と広い平地面積から田を中心とした農業を基盤として栄えてきました。江戸後期からの流れを汲む豪農の屋敷「坂野家住宅」(重要文化財)やこの地にゆかりのある豊田氏の居城を現代に建てた「常総市地域交流センター(石下城)」など歴史性を感じる風情が体験できる街です。道の駅の建設場所は常総市内の国道294号に面し、田園風景が広がる筑波山も望めるビューポイント。また、国道と交差する圏央道の常総ICも隣接し、道路交通上、利便性の高いエリアとなっています。
道の駅の店舗
道の駅常総のテーマは「食農楽のむすびまち 輝くえがおをつむぐ駅」というだけあり、食に関する店舗はこだわりを見せています。茨城を代表する果実であるメロンをテーマとした2店「ぼくとメロンとソフトクリーム。」、「ぼくとメロンとベーカリー。」。「ぼくとメロンとソフトクリーム。」では「茨城メロンソフト」などメロンを使用したソフトクリームやスイーツが楽しめ、「ぼくとメロンとベーカリー。」では代表メニューとなる「ぼくのクリームメロンパン」などが提供されます。また、メロンと並ぶ茨城の名産であるさつま芋店「芋とわ」は芋を使用した「ほしいも」や「クッキー」が販売。「TAMAGOYA常総ハウス」では「奥久慈軍鶏」や「つくば鶏」など茨城のブランド鶏を使用したメニューや新鮮な卵を使用したオムライスやプリン、バウムクーヘンなどの卵スイーツを取り扱います。
眺めが良く席数の多い2階にはテラスに面して「常総いなほ食堂」が入店。主に茨城の食材を活用した幅広いメニューにより多くの客を迎え入れます。ローズポークを使用した「豚丼定食」や「生姜焼き定食」、「とんかつ定食」、「ソースカツ丼定食」、つくば鶏を使用した「からあげ定食」などの人気メニュー、そして茨城ならではの稲わら納豆を添えた「いなほ食堂定食」、「海鮮ばくだんねばねば定食」、丼からはみ出すほどの海鮮系の丼メニュー、麺メニューとしては定番の「常陸秋そば」にくわえ「さしま茶そば」、「常総白菜ベジタボラーメン」、「はまぐりラーメン」などのオリジナル麺メニューを展開。茨城の食材を幅広く使った「道の駅 茨城レストラン」と言えます。
道の駅の設計と建設
2020年8月公募型プロポーザル方式により「AIS・須藤隆・景観設計共同企業体」が基本設計・実施設計業務を受注。「AIS総合設計」は宇都宮を本拠とする総合設計事務所で、宇都宮市内の「オリオンスクエア」、「カンセキスタジアム」などの大型案件のほか、道の駅としては「道の駅しもつけ」や「道の駅ばとう」などの設計実績があります。「須藤隆建築設計事務所」は土浦市内の建築設計事務所。「景観設計」はランドスケープや外構をメインとした設計コンサルタントです。
道の駅は鉄骨造2階建で延べ面積は約2千平方メートル。張り出した軒により水平性を強調し、洗練されたデザインでまとめられています。周囲に広がる農村平野エリアに対して景観的に抵抗することなく、新たな付加価値が農村地域に与えられた印象を受けます。2階への大階段やデッキの存在が人の動きや賑わいを視覚化するように計画されました。
2022年4月には入札により整備工事業者が「株木・染谷JV(共同企業体)」に決定し、約1年で完成。株木建設は茨城県内最大手のゼネコンで「あみプレミアムアウトレット」や同じく道の駅では「道の駅 常陸大宮かわプラザ」などを建設しています。
染谷工務店は地元常総の建設会社で共同住宅を得意分野としつつ、「茨城空港ターミナル」などの公共施設にもJV参画してきています。
アグリサイエンスバレーと道の駅の連携
常総市が進める「アグリサイエンスバレー構想」は生産・加工・流通・販売までを一貫して同一エリアで行う事業計画で、道の駅を含めた第六次産業による地域活性化を目標としています。特に道路交通アクセスの良さを活かした農業と産業の交流ゾーンの拠点としての機能が期待されています。「アグリサイエンスバレー」は大きく6つのエリア(「①道の駅」、「②商業施設」、「③産業系施設」、「④大規模園芸施設」、「⑤観光農園」、「⑥都市公園」)を配置し、それぞれが有機的に相互に結びつきながら運営・発展していくエリア計画と言えます。例えば、「④大規模園芸施設」で生産・栽培された農作物を「③産業系施設」で加工し、「①道の駅」で販売。「⑤観光農園」で農業体験をしながら、「①道の駅」や「⑥都市公園」で食やレジャーを楽しむなど、横断的な広がりが期待されます。これまでも「道の駅」の中で上記のような機能を集約した運営形態は全国的にも事例はあるものの、エリアとしては規模の大きい事業計画であると言えます。
道の駅の指定管理者は公募により「株式会社TTC」に決定、同社は自社版の道の駅である「村の駅」を上州、房総、伊豆に開設しているほか、神奈川・南足柄の道の駅「金太郎のふるさと」や静岡・伊豆の道の駅「伊豆月ヶ瀬」などの道の駅の指定管理者を多数務めています。地方創生や第6次産業によるブランディングを主事業としていることもあり、「道の駅常総」の目指すべきコンセプトの取り込みや新たな魅力を掘り起こしながらブランディングしていくものと見られます。近年の道の駅では魅力的な施設やサービスだけでなく、指定管理者による道の駅全体のプロデュースが成功の鍵を握っていると言っても過言ではありません。そういった中において、現代的な道の駅を手がけている同社の手腕に期待がかかります。
道の駅に隣接して「TSUTAYA BOOKSTORE常総インターチェンジ(仮称)」が出店予定
アグリサイエンスバレー内には民間集客施設として「TSUTAYA BOOKSTORE常総インターチェンジ(仮称)」の出店が予定されています。立地的には道の駅に隣接する可能性が高く、道の駅×TSUTAYA BOOKSTOREの相乗効果も期待されるところです。TSUTAYA BOOKSTOREは「ライフスタイル提案型」のストアを目指すこと、建築設計は「SUPPOSE DESIGN OFFICE」が行うことが公表され一気に注目度が高まりました。
2023年5月27日オープン予定アグリサイエンスバレーに誕生する"TSUTAYA BOOKSTORE 常総インターチェンジ(仮称)"
近隣の道の駅計画
茨城県内には道の駅の新設や増築計画が多数進められています。前述の「グランテラス筑西」は2019年にオープン済みで、「ハイブリッド道の駅」として魅力ある店舗や汎用性の高いサービス施設を集約するなど、最新型の道の駅として集客しています。「道の駅かさま」は地域の魅力を最大限に活かした計画で開業しています。「道の駅龍ヶ崎(仮称)」は龍ケ崎市の牛久沼沿いに計画中となっています。
"2021年9月16日(木)オープン"「道の駅 かさま」栗と陶芸の街「笠間」に誕生する新たなゲートウェイ
また、圏央道常総ICより一つ西のICである坂東IC付近に建設中の「坂東PA(パーキングエリア)」は、圏央道の休憩スペース不足の解消という計画の位置付けとともに、坂東市による地域利便施設の併設が計画されています。道の駅の設置も模索されていたなか、高速道路からだけでなく、一般道からアクセス可能な同類施設の誕生が期待されています。
圏央道"坂東PA(パーキングエリア)"緑あふれるまさかどの郷坂東 2022〜2024年建設、順次供用へ
2022年の道の駅登録では全国で4件の新道の駅が追加されました。同じ関東エリアからは「道の駅まえばし赤城」が登録されています。オープン時期は常総より早い2022年が予定されています。
アクセス
住所:茨城県常総市むすびまち。(国道294号線沿い)