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概要
十日町情報館は新潟県十日町市にある公共図書館。十日町は世界を代表とする豪雪地帯で冬季には3m近い積雪がある街として知られています。
十日町の中心部には「越後妻有里山現代美術館キナーレ(原広司設計)」、「十日町市博物館(石本建築事務所JV)」などが集約されており、文化的な施設や活動に力を入れて入れている街としても知られています。
その十日町の中心部にある、この図書館は映画「図書館戦争」のロケ地となったことでも知られています。
設計
設計は内藤廣。安曇野ちひろ美術館(長野県安曇野市)、JR旭川駅(北海道旭川市)、とらや工房(静岡県御殿場市)、馬車道駅などを設計、特に木質系の建築・空間づくりを得意としており、文化施設や公共空間を中心にしつつ、東京・銀座に「MIKIMOTO GINZA」の外装デザインを担当するなど幅の広い活躍を続けています。
"内藤廣 +KAJIMA DESIEN"MIKIMOTO GINZA 38,000のガラスピースにゆる春の海の光景
建築の特徴
フラットなスラブ(屋根)が全体に架かり、跳出しが大きく出ているデザインが目を引きます。その姿は一見、公共ホールや体育館を想起させますが、コンクリートに覆われたやや硬い外観と本が複層的に並ぶ内部空間の反転性を感じることができます。
内部はほぼワンルーム型で書架と閲覧スペースが並びます。ハイサイドライトや屋根のトップライトから適度な光が入りながらも、明るすぎず、図書館特有の気品が漂っています。
内部のハイライトは基壇をひっくり返して、地を掘り下げるように通路や階段によって、本の中を下っていくシーン。信濃川の河岸段丘のようでもあり、十日町の棚田のようでもあり、レベル差を本で繋いでいく空間構成は地理的な特徴を取り入れながらも、アカデミックかつ温かみのある空間を作り出してします。
屋根の反対側である天井はリズミカルにスラブのコンクリートリブが現しとなり、空間により深みを与えています。
積雪の重さと屋根の設計
十日町の積雪は3mにおよぶことも少なくありません。一般的には屋根に降る積雪は屋根勾配により敷地に落とし、汲み上げる地下水により融雪していく、という方法がとられます。
しかし、市内中心部は同じように地下水を汲み上げるため、冬季には街の地下水が枯渇する可能性があり、なるべく雪を敷地に落とさない計画、すなわち降る雪は屋根で受け止めることが必要になりました。
雪の重さは通常は1m×1mに1cm降ると2kgの重量になります。しかし、日本海のように湿り雪となるような地域では2kgが3kgに割り増しされます。積雪3mですと900kg/㎡!という計算になります。
図書館の書庫は780kg/㎡で設計されることを考えても、それよりも大きな荷重を屋根な見込まなければなりません。
建築において意匠と構造は表裏の関係と言われることもありますが、この図書館は表・表の関係が見て取れる作品だと思います。
アクセス
電車は北越急行ほくほく線十日町駅から徒歩15分。車では関越自動車道六日町ICより約16km、約25分。