概要
茨城県境町に隈研吾建築都市設計事務所が設計する「S-ブランド(計画名:まちかどカフェ)」が2021年5月27日オープン。境町は2018年頃より同事務所により設計された建物を集中的に街に送り出しており、本施設が6物件目となります。
建設地は2020年にオープンしたの同事務所の設計による「研究開発施設S-lab」と「しゅくさんぽう美術館S-gallery」の道路向かい。住宅や商店が並ぶ境町の中心エリアですが、あえて国道など交通利便性の良い場所に設けず、普遍的な「まちかど」に建設し、人々を誘引する地域活性化の手法を取っています。先行して完成した上記2施設は、特産品開発施設と美術館ですがカフェや喫茶機能はありませんでしたが、今回オープンした「S-ブランド」により残りのピースが埋められることになります。Sブランドには「HOSHIIMONO100Café(ほしいものひゃっかふぇ)」が入り、町が生産開発を進めてきた「芋」を使用したメニューが豊富なカフェがオープンします。
建物
規模は100㎡の木造2階建で小柄な戸建住宅ほどの大きさ。前面は低層部にガラスを張り、その正面には干し芋の繊維からイメージした地場産の杉ルーバーにより被覆させています。芋の繊維のように縦に伸びるようなデザインが木造2階という普遍的な形状に「高さ」を与えるとともに、より複合的な印象を付加しています。
隈研吾事務所が手掛けるカフェ建築で近年、特に話題性が高いのは東京・目黒にオープンした「スターバックス・リザーブロースタリー・東京」です。世界に僅か5店しかないスタバのハイエンドストアで旗艦店としての役割を果たしています。
東京・南青山にある「サニーヒルズ南青山店」は台湾のパイナップルケーキ店で、地獄組みと言われる木組によって圧巻の外観を作りだしています。
「スノーピークランドステーション白馬」は隈研吾×スノーピーク×スタバがコラボレーションした新形態のストアで白馬の美しい景色が楽しめる店舗となりました。
"隈研吾"スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京 目黒川沿いにあるスタバのハイエンドモデルストア
S-ブランド(HOSHIIMONO100Café)と境町のカフェ戦略
S-ブランド(まちかどカフェ)一つには「HOSHIIMONO100Café」がオープンします。県高萩市に本社を置く干し芋専門店「ほしいもの百貨」が運営します。「ほしいもの百貨」は東京有楽町に店舗を構えるほか、希少種の干し芋の通信販売で全国的な地名度を誇っています。S-ブランドから車で10分ほどの場所に建設された「モンテネグロ会館」は、同じく隈研吾事務所による設計で建築され、さしま茶の生産・販売を行う「長野園」の店舗が本施設に移転して予約制のカフェがオープンしています。このほか、地元の坂東太郎グループが運営する「8代葵カフェ」も2020年に完成しており、ハワイアンテイストのインテリアで人気を博しています。このように、境町では官民レベルの取り組みをで魅力的なカフェ作りが進行しており、街のブランド化が進められています。
町の隈建築
境町では隈建築による街の活性化が進行してきました。道の駅さかい「さかい河岸レストラン茶蔵」は2019.4に完成済み。特産品研究開発施設「S-Lab」とシュクサンポウ美術館「S-gallerry」、「モンテネグロ会館」が2020年に完成、着々と「隈コレクション」が揃いつつあります。「道の駅さかい」を起点として街への集客性を高めながら、中心部からあえて離れて建設することで、周遊性を高める戦略です。有名建築家の設計はコストがかかるのではないか、という見方もありますが、建築としては非常にシンプルな作りとしてコストを抑えつつ、魅せる部分にバランスを取りながデザインコードをインサートしていくことで全体としてはリーズナブルな建築に仕立てています。
町という既存の広い都市を美術館と捉え、様々な建築作品を点在させる街作りはこれまでもありましたが、ここまで同一の建築家の作品を集めてブランド化するという手法は国内でも例を見ないかもしれません。この建築の完成により隈研吾作品が全国で最も多い街となります。
営業時間・アクセス
営業時間:平日11時ー17時、土日祝日10時ー18時、火曜定休
住所:茨城県猿島郡境町1459-1
駐車場:10台