“隈研吾” 日本が世界へ発信する東京の観光拠点にある積層平屋「浅草文化観光センター」

“隈研吾” 日本が世界へ発信する東京の観光拠点にある積層平屋「浅草文化観光センター」

2021年4月4日

概要

「浅草観光文化センター」は台東区雷門にある観光広報・展示・会議などの機能を持つ複合施設で台東区が管理している建物です。敷地は東京を代表する観光拠点である浅草寺雷門の正面角地に位置しており、2012年の完成以降、浅草寺と合わせた観光拠点としてインバウンドを中心に賑わいを見せ、浅草の一風景として時を刻みはじめています。

設計

設計は「隈研吾建築都市設計事務所」。2008年に実施されたコンペティションで300を超える応募作品の中きら最優秀案に選定されました(次点は乾久美子建築設計事務所。一次通過者はシーラカンスアソシエイツや戸田建設などを含む5点)。隈研吾事務所は東京都内の近作では「スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京」、「根津美術館」、「一行院」、「明治神宮ミュージアム」、「高輪ゲートウェイ駅」、「東京中央郵便局JPタワーKITTE」でなど多数の物件で精力的な活動が続けられています。

"隈研吾"スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京 目黒川沿いにあるスタバのハイエンドモデルストア

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"隈研吾"根津美術館 極限まで薄く納められた屋根と竹のファサードを持つ南青山の私設美術館

概要 根津美術舘は東京都港区南青山にある美術館。2009年に新たに建替えオープン…
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"隈研吾+三菱地所設計"KITTE 東京中央郵便局 JPタワー モダニズムの名建築と超高層ビルの融合

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"隈研吾"明治神宮ミュージアム 神々が宿る杜の高さを超えないように納められたシャープさと透過性を持つ意匠

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"隈研吾設計"JR高輪ゲートウェイ駅 光を透過する折り紙のような1枚屋根がホームを包み込む

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"隈研吾"一行院 丸瓦の片流れ屋根を持つ寺院とオートメーション化された都市型屋内墓苑

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建築の特徴

縦の木ルーバーを取り付けたガラスの平屋をややランダムに積層した外観が特徴的なファサードが目を引きます。切妻や片流れなど異なる平屋を異方向の流れで積み上げながらも8階という高さの中でデザインのバランスを保っています。ガラスと木という素材の組み合わせはこれまで「一行院」や「那須歴史探訪館」、「那珂川町馬頭広重美術館」などでも見せてきました。ガラスに対して木ルーバーを直行方向に設ける手法は「富岡市庁舎」などにも見られます。

コンペに求められた課題は「雷門前という場所性を再考証し、地域の伝統、歴史、立地性等の解釈をして、建築デザインに具現化させることで、現在から将来へ向けての時間的広がりを持つ設計案が求められている。」でした。この課題に対して、次点の「乾事務所案」はファサードをガラス化し、透過した先に赤を主体とした浅草のハレの姿を表現するとともに、観光と地域という異なる利用形態に対して、都市としての浅草の特徴を建物の中にも展開する案を提示しました。佳作の「No design」案は全体をスパイラルスロープ化し、人々の動きを螺旋的に視覚化して照らし、ランタンのように街に灯火を与る計画でした。隈研吾事務所案は平屋を積み重ねることで浅草の持つ界隈性を垂直化させるという試みを持たせました。それぞれが浅草という地の特性、そこに新たに誕生する建築が周囲に対して何を与えていくかという点、そして独自性などが評価されました。インバウンドなどにより、浅草は日本を代表する観光拠点として地位を固めています。そういう中で本案は海外に対して、和という日本の現代デザインのあり方の一つを示しているように思います。

浅草寺前の交差点に積層する平屋建築が目を引く。
低層の土産物店なども並ぶ中、「平屋を重ねる」という手法は周辺を圧迫しないように感じられる。
木ルーバーがガラスに対して直行して貼られているため、正面ではガラスの印象が強くなる。
ルーバーに対して視線に角度を持たせるとより建物が「木質化」する。
木のピッチは一定ではない。
最上階から浅草寺を望む。浅草の展望台としても機能する。
建物内のホール
2階部分から雷門を望む。
エントランス