“隈研吾設計”那須歴史探訪館

“隈研吾設計”那須歴史探訪館

概要

「那須歴史探訪館」は栃木県那須町芦野にある那須町周辺の歴史をテーマにした資料館で2000年に完成しました。芦野地区は中世には芦野城、近世には旗本芦野氏の陣屋があった歴史的なエリアに位置し、敷地内の土倉は既存のものを活用しています。

設計

設計は隈研吾氏。栃木県内の隈建築はJR宝積寺駅那珂川町馬頭広重美術館STONE PLAZA、作新学院大学など。現在では全国、また世界的にも多数の実作を残していますが、本探訪館やSTONE PLAZA那珂川町馬頭広重美術館などは2000年前後の作品となり、まだ実作が少ない時期に栃木を中心とした実績から、建築家としてのフィールドを開拓していったように思います。

STONE PLAZAは同じ芦野地区にあり、徒歩圏内にあります。

 

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建築の特徴

既存敷地内にあった既存の土倉は壁と屋根を補修、陣屋裏門を模して作られた門の軸線上には那須岳を始めとする那須連山があり、那須の景色の入口でもあり、探訪館の入口となっています。

敷地入口にはフェンスとサインを兼ねたガラス面があり、透過性を持たせつつも周辺環境を映り込ませ、書かれた文字と合わせて建築への期待感を高めます。

探訪館はシンプルな長方形の平面の中心に事務室や収蔵室、トイレなどの諸室をまとめたコアを作り、周囲が外周と一致する展示動線となり、全体構成が非常に分かりやすい安心感のあるプランとなっています。コアは鉄筋コンクリートとして構造的な重心に寄与する役割ともなり、外周側をガラスとして透明度を高めることが可能となっています。

外周側のガラスの内側にはアルミフレームに藁を塗った「藁左官」の技法により作られた可動式のパネルが設けられてらおり、光のコントロールを可能としています。天井の仕上げ材としても連続性を持って使用されています。

敷地のエントランス。階段を登り陣屋裏門の左手に探訪館の入口がある。
やや青みがかかったガラスには歴史探訪館のプロローグが記載。
左手に土倉、右側が陣屋裏門、正面が探訪館。歴史的な表情と現代的な素材がマッチングした空間。
長屋門風の陣屋裏門の左手にはひっそりとした入口がある。障子のように見えるのは「烏山和紙」。内側のガラスに嵌め込まれている。
暗い風除室からホールに入る。
外周側に沿ったわかりやすい動線。
ガラスによって切り取られた景色がさらに内部のガラスに映り込み多層的な表情を作り出している。
「藁左官」と言われる技法により作られた可動式建具。上下レールにより左右に可動する。展示内容によって明るさや景色の調整が可能。
やや暗めの背面動線。明暗を上手く使い分けている。

隈建築と建築素材

隈研吾氏は2000年代以降、素材の持つテクスチャーを内外の仕上げ材として多様な使い方をすることで、様々な建築を生み出してきました。

建物の全体構成・形状は「那珂川町馬頭広重美術館」に近いですが、広重美術館が「木(杉)」と「ガラス」を主体とした素材を見せる一方で、この探訪館では「ガラス」、「石(芦野石)」、「藁(左官)」、「和紙」といった素材を面ごとに上手く使いこなしています。

本作品以降も「素材」や「和」といった文脈を持たせながら、多くの作品を展開し続けていますが、素材の見せ方や組み合わせにおいて、この建築路線における名作の一つであるように思います。

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床の仕上材に用いられている芦野石は那須町芦野から福島県白河市に繋がる国道294号線沿いの山で採掘される石で、安山岩(石英安山岩質溶結凝灰岩)に分類される石。STONEPLAZAでも主体的に使われており、共通項となっています。

アクセス

那須高原SAインターから約20分程度。