概要
「元気あっぷむら」は栃木県高根沢町にある日帰り温泉・宿泊施設。長らく赤字経営が続いていたことから、町は施設の大幅なリニューアルを図り「道の駅」として再建を目指しました。稼働していた施設は2019年6月末日で一旦営業は終了し、道の駅としての新施設の整備、リニューアルを進めて2020年4月にオープン。4月1日に予定どおりオープンしましたが、新型コロナウイルス感染症対策で4/11に予定していたオープニングイベントは延期と発表済み。
リニューアル計画
「元気あっぷむら」は日帰り温泉と宿泊施設を中心とした第三セクターの施設で、70度の源泉と豊富な湯量で地元の愛好家に人気を博していました。
一方で、栃木県には那須や那須塩原、鬼怒川、高根沢町の近隣では喜連川など関東でも著名な温泉場が多くあります。高根沢が首都圏からの立地的な優位性が無いなか、町外からの集客力を維持していく難しさがあったことは想像に難しくありません。
全国的に見れば「道の駅」ブームで、栃木県では「道の駅うつのみやろまんちっく村」、「道の駅もてぎ」など全国的にも集客性の高い道の駅があり、「道の駅ましこ」などの新規の施設も誕生しています。またたかねざわから10km程度の場所には同じくリニューアルした「道の駅 きつれがわ」が存在します。
集客性のある道の駅は立地よりもその道の駅でしか体験できない「特徴」や「魅力」を備えています。安易に「道の駅化」すれば客が来るのは短期的と言えるでしょう。このようななか高根沢町は具体的にどのようなリニューアルを行って道の駅の魅力を高めたのでしょうか。
①道の駅としての玄関施設である「情報提供施設」として新築。広いトイレや多機能トイレ、地元の観光情報スポットなどを発信するスペースを作り道の駅の「顔」を整備します。道の駅には必須条件。
②本館前にある「築山」が多様なイベントが開催できるスペースになります。これまで築山はどちらかというと景観的要素として存在するだけでした。これを恒常的にイベントが開催できるスペースに改修し、地元の農産者の販売スポットや工芸品の展示などに活用できるようになるようです。
③主力である温泉施設は内装をリニューアルし、日帰り温泉施設としての魅力を高めていきます。豊富な湯量や高い泉温から張られた湯船は多くの人を魅了してきました。温泉激戦区の栃木では温泉に加えて清潔な脱衣場などを提供してくことも集客には必要です。
④自然の森に面する親水公園前にはグランピングを主体とする宿泊施設を整備します。グランピングとは「グラマラス」と「キャンピング」を合わせた造語で近年、巷でもよく耳にすることが多くなりました。
キャンピングはテントを張ったり、調理の準備や片付けなどが好きではない方には煩わしい時間ですが、グランピングはあらかじめハイグレードなテントや宿泊施設を備えたトレーラーなどが配備され、食器などもセットされていて、食材があればあとは調理するだけといった具合に、手軽なアウトドアライフが楽しめる分野として脚光を浴びています。
2020.2.26に公表されたHPによれば親水公園に面したグランピング仕様のトレーラハウスで宿泊。プランごとに用意された食材がありBBQセットで調理できるスタイルです。
トレーラハウスはアメリカ・フォレストリバー社製のSONOMA。トレーラーごとに4〜6名の定員となっています。トレーラー内にはトイレ、バス、キッチン、冷蔵庫、エアコンなど宿泊に必要な設備は全て設けられています。価格は1泊2日食材込みで18,000円〜。海鮮食材のアップグレードプランは21,000円〜。
もともと備えている「自然公園の雄大な景色」や「上質な温泉」を最大限に活用した計画だと評価できると思います。間違いなく当道の駅のトピックスになる存在です。
以上「道の駅たかねざわ」のリニューアル計画を見ると近年、道の駅に求められつつある「滞在型」にシフトすることがはっきりと読み取れます。
栃木県の3箇所の道の駅(うつのみやろまんちっく村、もてぎ、日光)では積水ハウスとマリオットグループが道の駅に併設する「道の駅ホテル道の駅ホテル」計画を進めているところです。既存の道の駅にリーズナブルな宿泊特化型のホテルをオープンさせ、立ち寄りから宿泊・滞在といった機能をプラスすることで道の駅とその周辺店舗等の活性化を図る計画です。
このように栃木は観光名所だけではなく、道の駅を拠点とした周遊的な観光の広がりを期待した計画が至るところで進んでいます。