概要
アルカス土浦はJR土浦駅直結の図書館を中心とした複合施設で土浦駅中心部の活性化の核として計画されました。このような「駅前図書館」は全国的にも注目を集めています。茨城県内では「ゆうき市民情報センター」が2004年にオープン、群馬県太田市の太田駅前「太田市立図書館美術館」や栃木県那須塩原市黒磯駅前「那須塩原市立図書館みるる」なども新たな付加価値を見出した駅前図書館として話題となっています。
旧イトーヨーカドーに土浦市役所が移転、土浦の駅の再開発事業の主力として位置付けられ2017年にオープンしました。1階には市民ギャラリーが入り、駅とペデストリアンデッキで直接結ばれるレベルとなる2階が図書館の入口階となっています。図書館の蔵書は2020年時点で約44万冊でうち約10万冊が児童書となっています。
「地域のまちづくり・ひとづくりに役立つみんなの図書館」という基本方針のもと、「生涯学習」、「課題解決支援」、「まちづくり拠点」というテーマを重視した建設・運営を図ることを目的としています。
設計
設計は組織設計事務所「INA新建築研究所」。公共施設や共同住宅などを中心として多くの実績を持つ大手組織設計事務所で図書館では「陸前高田市立図書館」、「千葉市中央図書館」などを設計しています。施工は「清水建設JV」。清水建設としては県内では「つくば市新庁舎」、「流通経済大学」、「あみプレミアムアウトレット」、「坂東市庁舎」、「かすみ防災アリーナ」、「アダストリアみとアリーナ」など多数の大型物件を手がけています。
建築の特徴
駅前という立地を活かし、公共施設と民間施設が有機的に結ばれることで相乗効果を促し、集客やにぎわいの創出を図っています。
外観は駅前ということもあり、建物の姿の全貌が見せにくいなか、ピロティや庇下空間を1階から上層階まで通すことで豊かな引き込みを作り、人々を誘引するようなデザインとするとともに、ボリュームによる街の分断を避けるように階段や内部空間を積極的に見せることで緩和を図っています。垂直成分と水平成分が適度にバランス良く組み込まれており、品よく整理された印象を外部に与えています。
1階の「土浦市民ギャラリー」は約50㎡のオープンギャラリーが4スペース、約140㎡の展示ギャラリーが2スペースあり、市民レベルから商業レベルまで幅広い受け入れが可能な市民ギャラリーとなっています。駅直結ということで広域的な集客も期待できます。1階の店舗部分にはりそな銀行が入居、2階には学習塾が入居しています。
2階から4階までは図書館機能が入っています。図書館の主階を2階とすることでペデストリアンデッキから直接のアプローチすることで、駅や駅ビル利用者にとって利便性が高い配置となっています。2階は情報ステーション、よむカフェラウンジと名付けれられたドリンクを飲みながら図書が閲覧できるスペースが設けられています。また、2階は児童図書スペースとして広く割り当てられており、豊富な蔵書数だけでなく、児童の中でも適応年齢や目的に応じたレイアウトがなされているほか、靴を脱いで閲覧できる「キッズコーナー」や読み聞かせイベントなどが開催される「おはなしの部屋」などがあり、授乳スペースや子供専用の小型トイレなど設備面でも充実しています。
3階は地域資料と一般開架となり数多くの蔵書に対応しながらも「空中ラウンジ」などを設けることで、図書館としての硬さを和らげ広い世代に利用してもらえるような計画となっています。
4階は自習室と自由に利用できるロフトと呼ばれるコミュニティスペースが配置されています。
屋上には庭園空間を設け、駅前の高度利用を図りながら緑を見せています。
空間やソフト面だけでなく、自動貸出し機や自動返却機も最新のタイプが使用されており、利用形態の多様化と現代的な図書館機能の集積により、街の中心図書館として新たな在り方を示しています。
アクセス、開館時間
開館時間 :10時〜20時(平日)、10時〜18時(土休日)
休館日 :月曜日(第1を除く)、年末年始、特別休館日
駐車場:有り(有料。1時間300円。図書館利用者は2時間まで無料)