概要
茨城県境町にワインや干し芋を特産物とするための研究開発施設「S-Lab」が2020年に完成し共用開始しました。「S-Lab」は見学や体験参加も可能な機能を持たせており、地域特産により街の魅力を向上させていきます。場所は境町の中心部で「道の駅さかい」や「河岸の駅さかい」の徒歩圏内にあり、同エリアに集中的に点在させることで周遊的なネットワークを高めつつ、街の再生を図る計画としています。
隈研吾建築都市設計事務所は2019年4月に「道の駅さかい」に併設する「さかい河岸レストラン茶蔵」を設計。
茨城県内の隈建築は道の駅さかい「さかい河岸レストラン茶蔵」、県南総合防災センター(取手)、丸山海苔店(つくば)に次ぎ4件目、5件目となります。今回「S-Lab」と隣り合う形で美術館「S-Gallery」も完成済。異用途の建築が一体的なデザインのもと地域に新たな文化的価値を吹き込みます。
東京都内の近作では「スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京」、「根津美術館」、「明治神宮ミュージアム」、「高輪ゲートウェイ駅」、「歌舞伎座タワー」、「東京中央郵便局JPタワーKITTE」など多数の物件で精力的な活動が続けられています。
建築家がある街の建築を集中して設計していくことは決して珍しいことではありません。県内であれば妹島和世作品が多い日立市がそうでしょうし、長野県安曇野市の内藤廣さんなども有名です。
特産品研究開発施設とは?
研究施設と聞くと理科学系の「研究所」が思い浮かびますが、ここで研究・開発するものは「特産品」です。
開発ターゲットは「干し芋」の材料である「サツマイモ」と「ワイン」の「ブドウ」と公表されています。干し芋は既に茨城県の名産ですが、ワインの開発はまだ盛んとは言えません。
干し芋の産地としてはひたちなか市や東海村が有名で、茨城県産が国内シェア9割、冬季の乾燥した北西風が干し芋の乾燥に向いているとか。ビタミンB、C、Eが豊富で近年の健康食品ブームもあり需要が増えているそうです。
ワインは茨城では馴染みがないかもしれませんが、かつては「牛久シャトー」で葡萄の栽培から醸造、生産を行っていました。また、筑波山麓では「つくばワイナリー」が2013年から生産、現在では「Twin Peaks」を商品として販売しています。
境町は「さしま茶」が有名で、茶蔵のメインテーマにもなっています。これに加えて新たな食の発信ツールを増やしていきたいということかと思いますし、農業の後継者問題や農の収益効率化といった点で将来を見据えた拠点としての位置付けもあるのかもしれません。