概要
水戸市は茨城県の県庁所在地で、人口約27万人を抱え県内唯一の中核市に位置付けられています。その街の中心部に計画されている水戸市新市民会館(仮称)。2023年4月のオープンを目標としています。県下最大級となる約2,000席の大ホールや500弱の席を持つ中ホールを設け、コンサートや学会、全国大会に対応できるスペースを提供。JR水戸駅から徒歩1.5kmに位置することから多くの市民主体イベントにくわえ、都内から90分というアクセスを活かし集客性の高いイベントも視野に入れています。
旧市民会館は平成23年の東日本大震災で被災し利用継続が困難な状況に陥りました。既存施設の改修は難しいことから新たな市民会館の建設の検討が進められてきました。建物の開発は市街化再開発事業の一環として進められることとなり、既存の水戸芸術劇場と両輪となり芸術・文化拠点として機能していくことが期待されています。


新市民会館の設計
建物の設計は伊東豊雄建築建築設計事務所。50社を超える公開型プロポーザル方式によって最優秀案となり選定されました。(次点はteco・能作建築設計事務所設計共同企業体)
伊藤氏は2013年に建築界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」を受賞。代表作として「仙台メディアテーク(仙台市)」、「まつもと市民芸術館」(松本市)、「信毎メディアガーデン」(松本市)、「大田区休養村とうぶ」(東御市)、「ミキモト2」(東京都中央区)などがあり、国内外問わず数多くの作品を残しています。個人住宅以外の茨城県内の作品としては1994年完成の「つくば南3駐車場」以来となり、約25年来の新作となります。




県内出身で世界的に活躍する妹島和世氏は伊藤事務所での勤務経験があり「伊藤スクール」の代表的な出身者。県内では「JR日立駅」、「日立市庁舎」、「ひたち野リフレ」、「古河総合公園飲食施設」など実績が多数あります。



建物構成
市民会館として様々な規模に利用に対応できる大中小のホールが本施設の核となります。大ホールは県最大クラスとなる2,000人規模。県内各所に1,000〜1,500人規模のホールは複数あるものの、これまで出来なかった規模のコンサートなどにも対応できることになります。ホールは3層構成となっており人数に応じた層利用が可能となっています。
482人が収容可能なシューボックス型断面の中ホールは使いやすい規模でピアノ演奏会や演劇、講演会など様々な使い方に対応。100人が収容可能な小ホールはフラットなスペースのため、フレキシブルな小規模利用が可能。また、大ホールの舞台と同面積で練習スペースとしての活用も想定されています。
展示室は430㎡の広さがあり、様々な展示活動に対応。可動パネルによりフレキシブルなスペース、動線作りが可能。会議室もバリエーションに富んでおり、大×1、中×4、小×7と学会などはもちろん、様々な市民活動の場としての利用が想定されています。


隣接する水戸芸術館
本敷地に隣接して市政100年を記念して1990年に開館した「水戸芸術館」があります。館長は世界的指揮者の小沢征爾氏。席数620〜680のATMホールは主にクラシックのコンサートの開催に特化したホールでアリーナ型のレイアウトをしています。このほか、円形のACM劇場や現代美術ギャラリーなどを有し、「音楽・演劇・芸術」を核とした総合芸術施設です。
長野県松本市の「まつもと市民芸術館」は伊東豊雄氏が設計した音楽ホールを主体とする芸術市民会館ですが、毎年8月9月に開催される「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」では小澤征爾氏総監督のもと「サイトウ・キネン・オーケストラ」開催され続け、市の音楽・芸術を主とする文化的醸成を高めてきました。

「水戸芸術館」は引き続き専門性の高い分野に特化しつつ、新水戸市民会館は芸術館と競合しない規模のホールやフレキシビリティーを武器に両施設が両輪となって水戸を中心とするエリアの芸術・文化活動を支えていくことになるでしょう。
なお、この「水戸芸術館」は「磯崎新」氏の作品。「つくばセンタービル」を代表作として、昨年これまでの実績が認められプリツカー賞を受賞しています。
