“磯崎新”水戸芸術館

“磯崎新”水戸芸術館

2020年12月15日

概要

水戸市は茨城県の県庁所在地で、人口約27万人を抱え県内唯一の中核市に位置付けられています。その街の中心部にある水戸芸術館はJR水戸駅から徒歩1.5kmに位置、茨城の芸術・音楽の求心的施設として存在しています。

市政100年を記念して1990年に開館。館長は世界的指揮者の小沢征爾氏。席数620〜680のATMホールは主にクラシックのコンサートの開催に特化したホールでアリーナ型のレイアウトをしています。このほか、円形のACM劇場や現代美術ギャラリーなどを有し、「音楽・演劇・芸術」を核とした総合芸術施設です。

水戸中心部の俯瞰。手前のタワーが水戸芸術館。奥に千波湖が見え。その右方が偕楽園。
水戸芸術館。中央部の円形はACM劇場

設計

設計は磯崎新(いそざきあらた)氏。建築界では「巨匠」と呼ばれる数少ない存在。日本で最も世界的に活躍した建築家の一人である「丹下健三」のもとで働き独立、現東京都庁舎の設計コンペにて師弟対決となった出来事(丹下健三が最優秀作)は社会的にも話題となりました。

ポストモダンの使い手として、また高度な建築理論に裏付けされた学問としての建築設計の価値を高め、2019年になり「プリツカー賞」を受賞しました。プリツカー賞は建築界のノーベル賞と言われるほど権威のある賞で、日本人としては8人目の受賞となりました。

建築の特徴

建築意匠は「ポストモダン」と言われる1980年代の建築潮流の代表作として知られています。磯崎新氏はその代表的な建築家で県南つくばの「つくばセンタービル」と合わせて語られることが少なくありません。

"磯崎新"つくばセンタービル

概要 つくばセンタービルは茨城県つくば市中心部にある「オークラフロンティアホテル…
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ポストモダンとは合理主義や機能主義といった意匠的なミニマリズムである「モダニズム」の反動として、過去の歴史を引き出しながら引用し、装飾性を帯びた建築が生み出されてきました。一見、豪華さを伴うその姿はバブル期という時代背景と切っても切れない関係にあることも事実で、時に批判的な立場に置かれることも少なくありませんでした。

100mある塔は市政100年を記念して一体として建てられた。棟は水戸のランドマークであり、展望棟としての役割もある。
コの字型に配された中には西洋芝が幾何学的に張られており、ヨーロッパの広場のような空間となっている。
タワーの影が建物に落ちる。
このオブジェは水戸の「水」から着想している。千波湖のような自然の水場と人工的な水場の対比として見ることもできる。
メインエントランスホール。円形の柱や双柱、メダル風の装飾などが欧州の建築を想起させ、パイプオルガンが教会建築であるかのような印象を与える。
エントランスホールのパイプオルガン
水戸芸術館のプラン。劇場、コンサートホール、タワーが独立しつつ囲われている。

新水戸市民会館計画との関係

水戸芸術館に隣接するように現在「水戸市新市民会館(仮称)」が建築されています。2023年4月のオープンを目標としています。県下最大級となる約2,000席の大ホールや500弱の席を持つ中ホールを設け、コンサートや学会、全国大会に対応できるスペースを提供します。設計は伊東豊雄氏。水戸芸術館は引き続き専門性の高い分野に特化しつつ、新水戸市民会館は芸術館と競合しない規模のホールやフレキシビリティーを武器に両施設が両輪となって水戸を中心とするエリアの芸術・文化活動を支えていくことになるでしょう。

2023年4月完成予定 伊東豊雄"新水戸市民会館"水戸芸術館に隣接するやぐら広場のある木質系新市民ホール

概要 水戸市は茨城県の県庁所在地で、人口約27万人を抱え県内唯一の中核市に位置付…
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