“青木淳共同設計最適選定”松本平広域公園陸上競技場建替計画

“青木淳共同設計最適選定”松本平広域公園陸上競技場建替計画

建築

概要

長野県松本市にある陸上総合競技場の建替え計画。1977年に建築され約40年が経過し老朽化、2027年に国体のメイン会場となることが決定しており、施設のバリアフリー化も必要となることもあり建替を決定しました。

松本平広域公園陸上競技場は松本空港を取り囲むようにある松本平広域公園内の施設でもあり、競技場としての専門施設と長く親しまれる都市公園機能としての活用、北アルプスを背景とする景観形成などが求められています。

松本空港と隣接した公園内の既存競技場の建替計画。奥は北アルプス。

著名建築家が参集した基本設計プロポーザル

この事業はプロポーザル方式(主に提案力により優れた設計者を選定)により基本設計者を選定する方式が取られましたが、参加した設計チームが国内外で活躍する著名な建築家が揃い注目を集めました。

参加した設計グループは、1.環境デザイン・林魏・倉橋建築設計共同体、2.久米・内藤廣・E-DESIGN 設計共同体、3.(株)槇総合計画事務所、4(有)SANNA 事務所、5.(株)伊東豊雄建築設計事務所、6.環境設計研究所山田建築設計室共同体、7.(株)隈研吾建築都市設計事務所、8.青木淳・昭和設計共同体。

8グループ中3グループ(3.槇事務所、4.SANAA、5.伊東豊雄)が建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞受賞者が主宰する事務所、また新国立競技場の設計を担当し、コンペでは連戦連勝と言われる7.隈研吾建築都市設計事務所、千田満氏が主宰する環境デザイン研究所などそうそうたる事務所が参加しました。反面、大手設計事務所の参加がありませんでした。
松本また長野県という枠で見ても実績や馴染みのある設計者も多いのも特徴でした。2.の内藤廣事務所は「安曇野ちひろ美術館」、「安曇野市庁舎」などを設計、地域や多くの観光客に親しまれています。松本を代表する建築の一つである「まつもと市民芸術館」は伊東豊雄事務所の作品。「長野市第一庁舎・長野市芸術館」は槇事務所。「飯田市小笠原資料館」はSANAAの初期の作品。共同設計者の西沢立衛氏は「軽井沢千住博美術館」を設計。隈事務所は「飯山市文化交流館なちゅら」、「奥社の茶屋」、「スノーピークランドステーション白馬」など実績多数。
審査委員長は早稲田大学教授で建築家の古谷誠章氏。県内では「小布施町立図書館まちとしょてらそ」、「茅野市民館」を設計。
6人の委員の投票により二次審査に進んだのは「1.環境デザイン・林魏・倉橋建築設計共同体」、「3.(株)槇総合計画事務所」、「8.青木淳・昭和設計共同体」。代表作審査や二次審査を経て「8.青木淳・昭和設計共同体」が最適候補者となりました。
「著名」というよりも最早「大御所」といったグループが二次に残りましたが、その中では若手の青木淳・昭和設計が選出されたのは印象的でした。代表作として京都市京セラ美術館を手掛けています。
どの参加者もコロナ渦のプロポーザル設計となり、思い通りにいかない部分は多々あったと推察します。それでも仕上げてくる全ての事務所の底力には驚かされます。

並みいる強豪を抑えた最適候補者案とは

公募の実施要領では、2027国体も見据えつつも公園と一体となり長期的な視点に立って「高度な技術力」、「時代を超える美しいデザインを生み出す力」、「将来を見越す力」、「県民や関係者などと一体となって設計を練り上げていく力量」などが求められました。その中で「青木淳・昭和設計共同体」が提案した案は「敷地一杯使いたおせる活動の場」。メインフィールド(陸上競技場)は「つ」の字型として完全には囲わない、様々なスポーツやイベントの場=アウトフィールドをメインに並行で配置し、双方が行き来できるようなシームレスな提案。全体的にも公園の中に更衣室などの必要スペースが点在していくような、これまでの囲われた競技場としての既成概念から、新たなあり方を示した案でした。

審査の中では競技関係者の目で見ると詰めなければならない点がいくつかある、というコメントがありつつも、この先の競技場のあり方、方向性を示す案として選出。

昨今ではスポーツ開催にあたっては「アスリートファースト」の意識が十分なされているか、という論点がもてはやされていました。しかし、ここでは県有施設は長年に渡り広く県民に親しまれる場であること、を重要視されたような感じさえします。その背景にある2020(2021)TOKYO以降の新たな競技場の誕生を楽しみにしています。