概要
「サニーヒルズ南青山店」は港区南青山にある菓子店・カフェ。台湾では「微熱山丘」として南投市に本拠があるほか、上海やシンガポールにも店舗を構え、日本国内ではこの南青山と大阪駅に店舗を有するアジア展開を図っていショップです。台湾の鉄分を多く含む土壌から育つパイナップルはケーキにしてもその味をしっかりと残し、看板商品として販売されています。
設計
設計は「隈研吾建築都市設計事務所」。隈研吾事務所は東京都内の近作では「スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京」、「根津美術館」、「一行院」、「明治神宮ミュージアム」、「高輪ゲートウェイ駅」、「東京中央郵便局JPタワーKITTE」、「浅草文化観光センター」でなど多数の物件で精力的な活動が続けられています。
"隈研吾"スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京 目黒川沿いにあるスタバのハイエンドモデルストア
"隈研吾+三菱地所設計"KITTE 東京中央郵便局 JPタワー モダニズムの名建築と超高層ビルの融合
"隈研吾"明治神宮ミュージアム 神々が宿る杜の高さを超えないように納められたシャープさと透過性を持つ意匠
建築の特徴
南青山の住宅街に突如現れる木組みの外観は外部に対して圧倒的なインパクトを与えつつ、内部への強い期待感をもたらしています。店舗は「地獄組み」と言われる伝統的な木組工法により覆われ、昼は入り組んだ木々が森のような密度を作り出し、夜間には木組みの間から漏れるあかりが提灯のような役割を果たしています。
「地獄組み」は家具や建具の意匠文化として用いられてきたようですが、建築物に本格的に応用される事例は極めて少ないようです。同氏による設計でスターバックスコーヒーのリージョナルランドマークストア「太宰府天満宮店」ではインテリアのデザイン構成として用いたことはありました。
岐阜県産の檜(ヒノキ)は60mm角に製材され、菱形を基本形とした格子状に組まれ、外観のほぼ全てを覆っています。釘や金物を使用しない木組工法の中でも極めて高い精度や施工技術が求められます。通常は木の片側を切り欠いて双方の部材を合わせて組みますが、地獄組みは反対側にも切り欠きを作ります。木の特性として切欠き側に開きや伸縮を伴いますが、双方の面を切り欠くことで変形に一方向性を持たせないというメリットがあります。施工難度が高く、一度組み上げると二度と取り外すことができないことからも構造的にも強度が高い、と言うことができます。
見た目だけでは決して読み取ることができない「パイナップルケーキ店」というワードの”甘さ”と「地獄組み」という”辛さ”が建築の対極性を生み出しています。