概要
「スターバックスコーヒー上野恩賜店」は東京都台東区にある上野恩賜公園内にあるスターバックスの店舗。2012年にオープン。現在では公共公園内にスタバが出店するケースも珍しくなくなってきましたが、当時は「富山環水公園店(富山県)」、「福岡大濠公園店(福岡県)」に次ぐ3店舗目としてオープンしています。公園再生計画のもと都により建物が整備され、15社からスターバックスコーヒーが運営者として選定されました。
上野恩賜公園は東京都が管轄する都市公園で開設は明治6年に遡り、国内で最初の都市公園とも言われています。不忍池や上野恩賜動物園などともに老若男女、多くの都民や観光客に親しまれ、上野の森には「国立西洋美術館」、「国立科学博物館」、「東京国立博物館」、「東京都美術館」、「東京文化会館」、「国際こども図書館」など、価値の高い文化施設が軒を並べる世界的にも貴重な文化公園としても知られています。
設計
設計は「緑の風景計画」。公園や緑地の計画・設計・調査・景観などを専門とするコンサルタントです。「井の頭公園」や「国営ひたち海浜公園」など大型公園における業務の実績があります。
リージョナルランドマークストアと公園内のスタバ
全国に1,200以上あるスタバの店舗のうち25の店舗(2020年12月現在)が「リージョナルランドマークストア」として位置付けられています。「リージョナルランドマークストア」は「国内の象徴となる場所に建築デザインされ、地域の文化を世界に発信する店舗として訪れる人々がその地域の歴史や伝統工芸、文化、産業の素晴らしさを再発見し、その発見を通じて地域へ絆を感じられるよう、様々なローカルのデザインエレメントを織り込んだ店舗」(スターバックスコーヒージャパン)としています。
目黒にオープンした「スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京」は未だ世界に5店しかないスタバのフラッグシップモデル店で隈研吾事務所設計のもと文字通りランドマークとなりうる店舗として注目されました。
公園内にあるリージョナルランドマークストアとしては前述の「富山環水公園」は世界で最も美しいスタバの一つとして知られているほか、大阪城森ノ宮公園店、浜松城公園店、山口中央公園店、奈良鴻ノ池運動公園店、福岡大濠公園店などリージョナルな場として「公園というロケーション」を重視されていることがわかると思います。
上野恩賜公園店は「リージョナル」という点では十分すぎる要素を備えていますが、「新宿御苑店」と同様に現時点では同社によるリージョナルランドマークストアにはラインナップされていません。上野公園が都所管ということもあり、企業広報に繋がるアクションを控えているのかもしれませんし、自社所有ではないというという背景があるものと推察します。「”隠れ”リージョナルランドマークストア」として今後、注目されていくかもしれません。
"隈研吾"スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京 目黒川沿いにあるスタバのハイエンドモデルストア
建築の特徴
公園の大通りに呼応するように、長い平面に切妻形の形状となっており、木質のフレームに深い庇が組み合わさり、公園の環境を邪魔しないデザインに仕上げらています。樹木より屋根の高さを抑え、庇を斜め柱で支える構成は自らも樹木的な立ち方をしています。正面はほぼガラスにより公園との境界を希薄にしてより周辺環境との一体感を味わえる設計です。
カウンターには上野公園にちなんだ桜の無垢材が用いられ、カウンター下の表面材には地場の職人により樹皮が貼られるなど、上野公園という地との共通項を持たせています。広い店内は利用形態により3つのエリアに分けられ、「気軽に立ち寄れる開放的な空間」、「緑と光に溢れたリラックスできる空間」、「静かに景色を鑑賞できる空間」が用意されており、いずれも上野公園の景観を最大限に堪能できるレイアウトとなっています。
アクセス
JR上野駅/公園口 徒歩7分
京成上野駅/池の端口 徒歩11分
京成上野駅/正面口 徒歩11分