“マウントフジアーキテクツ”流山おおたかの森FLAPS 基壇化で生まれた屋上緑化空間を持つ街のリビングルーム

“マウントフジアーキテクツ”流山おおたかの森FLAPS 基壇化で生まれた屋上緑化空間を持つ街のリビングルーム

2021年2月12日

概要

FLAPS」は千葉県流山市「流山おおたかの森SC」の別館となる新商業施設で2021年春にオープンしました。流山おおたかの森駅はつくばエクスプレスのほぼ中間点にある駅で、都心からのアクセスの良さや東部アーバンパークラインとのターミナルとして交通利便性が高いことから住宅地としてのニーズも高く、住宅と商業開発が平行的に進行している街です。つくばエクスプレス沿線の駅全般な流れではありますが、特に当駅や隣駅である「柏の葉キャンパス」駅での開発が顕著となっています。

駅前の流山おおたかの森SCは高島屋系列の子会社により、平成19年にオープンした大型商業施設。開業から10年を経過し、エリア人口の増加により利用者が増え続けていることも本別館計画の背景となっています。

設計

設計は「マウントフジアーキテクツスタジオ」。原田真弘氏と原田麻魚氏が共同代表を務める設計事務所です。原田真弘氏は隈研吾建築都市設計事務所、磯崎新アトリエを経て独立。現在は出身大学である芝浦工業大学で建築学科教授を務めるプロフェッサーアーキテクトとしても活動しています。平成29年度に「道の駅ましこ」で「日本建築学会大賞」を受賞しており、周辺の風景への溶け込みや地域の素材を特に意識した設計が評価されました。

"マウントフジアーキテクツスタジオ設計"道の駅ましこ

概要 「道の駅ましこ」は栃木県益子町の県道沿いにオープンした栃木県24カ所目の道…
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建築の特徴

地上6階建ての建物は各階が少しずつセットバックして、各階の屋根に外部フロアを作り出し、外観上は相互にずらした2層スキップフロアとしています。建物の「階段化」によって外部に生まれたスペースは各階の屋外スペースとし、緑化することで上層階に行っても地上階のような緑豊かな風景が得られるメリットがあり、開発によって流山の緑が減少しているという課題に対して、流山の商業施設と都市の緑地の新たなあり方を示しています。

FLAPSを含む駅前広場も同時に開発。「まちのリビングルーム」として、緑やファニチャーを充実させるとともに、様々なイベントの場として活用できることを想定しています。誰でもいつでも気軽に憩いや安らぎを求めて広場や商業施設を利用することができます。

建物外装は押出成形セメント板を縦使いとし、モルタの仕上げ風に仕立てています。既存のSCとの差別化を図りつつ、都市的に洗練された印象とし、また外部の緑化がキレイに映えることを目的としているように思います。また、各階で開口部を大きく取ることで内外双方の視線が交差し、外部環境と店舗のつながりを意識しているように感じられます。近年、イオン等に代表される大型SC(ショッピングセンター)は外部に対して閉じて作られ、内部空間を作り込むことで、外部とは切り離した建物内の街を創出する手法が流行してきました。SC単体として見れば優れた商業施設と言えるのかもしれませんが、一方で外部との繋がりを断ち、街全体でみると「SCとそれ以外」という境界がより顕著になり、街全体の魅力を削いでしまった印象もあります。巨大SCが既存の商店街を無力化してしまうという現象が全国各地で健在化したのも事実でしょう。

こういう面で、よりオープンな駅前商業施設「FLAPS」の今後が楽しみです。

流山おおたかの森駅と流山おおたかの森SCを結ぶ円形のデッキ。デッキの中心は地上階で駅前広場となる。コーナー部にはデッキレベルから上層階にアクセスできる階段が設けられ外観上のアクセントとなっている。
無機質な仕上げに上に延びる緑化、基壇上のフォルムが流山に新たな一面を作り出す。

駅から降りた場は「おおたかの森SC」と「FLAPS」に囲われた緑豊かな空間は様々な利用が可能となる。

建物コンテンツ

「便利・遊び・楽しさ・にぎわい」をコンセプトに、 遊びもつまった「洗練された自然体の暮らし」を提案。駅の改札レベルである2階を主階として、1階に生鮮食品「Daily Table KINOKUNIYA」が入ります。首都圏の駅構内を中心に紀伊國屋の質をそのままにコンパクト化した店舗、2階には無印良品を核とするアパレル、3階は子育て世代をターゲットとしたアパレル・雑貨、4階はレストランなどを中心とした飲食ゾーン、5階はこどもや子育て世代にニーズの高いサービス系店舗、6階はボーネルンドが運営する「あそびのせかい」が入りました。建物デザインと合わせ、子どもと子育て世代に広く開いた施設になると感じられます。

アクセス

つくばエクスプレス「流山おおたかの森」駅、徒歩0分。