SANAA “ディオール表参道”透過性のある白いドレープカーテンに身を纏うインターナショナルブランド旗艦店

SANAA “ディオール表参道”透過性のある白いドレープカーテンに身を纏うインターナショナルブランド旗艦店

2021年6月10日

概要

ディオール表参道は渋谷区神宮前にあるインターナショナルブランド「Dior」の日本旗艦店。フランスのデザイナー「クリスチャン・ディオール」が1946年に設立し約75年の歴史を持っています。オートクチュールや宝飾品、革製品、時計など幅広い商品展開を図っています。パリに本拠を置き、現在ではLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)の傘下となっています。

設計

建築設計は妹島和世氏と西沢立衛氏と共同で運営する「SANAA」が手掛けています。2010年にはプリツカー賞を受賞。SANAAの作品としては「ルーブル・ランス(フランス)」、「金沢21世紀美術館」などがあるほか、妹島氏は「JR日立駅」の設計監修、「日立市庁舎」を設計しています。

表参道は銀座と並び「建築家のショールーム」として「表参道ヒルズ」、「PLADA青山店」、「MIUMIU青山店」、「Apple store表参道」、「東急プラザ表参道原宿」、「ケリングビル」など数々の有名建築家による作品が軒を並べています。「GYRE」は本建物に隣接して建っています。

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"妹島和世設計"日立市新庁舎

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建築の特徴

高さ約30mの建築はほぼガラスによって覆われており、透過度の高い外観を有しています。地上4階建てでありながら、積層された外観は8階建てほどありそうな印象を与えています。各階の階高は異なるものの、各階の天井層を設備スペースとして十分に確保することで外観上の階を獲得しています。夜間には天井内も照明化することで均一な発光体となって表参道に光を照らしています。

外装は外側をガラス、内側をアクリルとした二重構成としています。ブランド店の多くが外部と内部のデザインを切り分けて表現されている現状に対して、ガラスと加工成型されたアクリルにより、内の様子を外に、外の様子を中に柔らかく伝達するように意図されています。

アクリルパネルは専用の型材から成型されており、クリスチャン・ディオールの世界観との共通項を探っています。完全な平板ではなく表面が三次元の曲面となり、内外に揺らぎのような印象を作り出しています。各パネルは建具状に開閉可能な設えとなり、ドレープカーテンに身をまとっているかのような佇まいになっています。

クリスチャン・ディオールはデザイナーとして成功を納めましたが、若い頃は建築家を目指していたと時期もあったと言われています。手掛けた「Archi Dior」シリーズは建築家へのオマージュから生み出された装飾品としていられているほか、生涯、オートクチュール(オーダー品)に力を入れていましたが、建築の世界はオートクチュール(一品生産)であるという点でディオールの方向性と一致しています。

表参道のケヤキの背景に建つディオール表参道。洗練された建築が並ぶ表参道にあって、女性的な上品さが漂う外観。
右の焦げ茶カラーのGYREと対比して、より白く映えている。2004年から15年以上経過しているがよくメンテナンスされていることがわかる。
積層された異なる階高が単調さを低減している。