“MVRDV”GYRE(ジャイア)オランダのユニットが設計した渦のように回転しながら上層階へ誘導する建築

“MVRDV”GYRE(ジャイア)オランダのユニットが設計した渦のように回転しながら上層階へ誘導する建築

2020年12月19日

概要

GYREは東京原宿・表参道にあるにある商業施設、飲食施設。JR原宿駅(=明治神宮前)から東に伸びる道路は表参道と呼ばれ、世界的なブランドの店舗が軒を並べる通りとなっており、GIREもこの通りに面しています。GYRE(ジャイア)は「渦(うず)」を意味しており、「回転しながら物事も集めていき、そしてこの場からあらゆる発信を行って行く」というコンセプトのもとにプロデュースされました。

設計

設計はMVRDV。オランダに本拠を置く建築設計ユニットです。ヨーロッパ圏全域を中心として活動。日本国内では新潟県の十日町市松代にある「まつだい雪国農耕文化村センター農舞台」を設計、国内2作品目として「GYLE(ジャイア)」を手がけました。MVRDVは創設メンバーの頭文字、Winy Maas、Jacob van Rijs、Nathalie de Vriesからネーミングしています。日本人では早稲田大学教授で建築家の吉村靖孝が在籍していました。

GYREの総合プロデュースは「竹中工務店」が行っています。企画から施工までトータルで手がける中で共同設計者として指名コンペティションにより「MVRDV」を迎えました。表参道エリアでは「PRADA青山店」、「MIUMIU青山店」(ヘルツォーク&ド・ムーロンデザイン、竹中工務店は実施設計・施工)、「東急プラザ(中村拓志)」、「TOD’S表参道(伊東豊雄)」など注目の作品を多く産出してきました。

日本国内においてはこれまでも海外の有名建築家の作品が数多く登場してきましが、外国人アーキテクトのデザインは国内の建築と比較して非常に”アグレッシブ”なデザインが多い、という点で共通しています。日本は海外に比べて法規制のレベルが高く、そして何よりも地震国という点で国内仕様の耐震設計が必須になるため、海外建築家事務所が単独で設計を行うということは事実上困難です。(もちろん建築士法の要件もある)また製作や施工過程での実現性も踏まえれば、大手建築設計事務所や大手ゼネコンがトータルで関与していくということが一般化してきたように思います。

2020年には施設の4階にGIRE.FOODがオープンしています。このGIRE.FOODは建築家の田根剛氏が手がけています。田根氏は若干26歳でエストニア国立博物館の国際コンペティションで最優秀賞を受賞し、その後国内外で活躍。他の建築家が設計した建築に別の建築家が関わるということは決して多い事例ではありませんが、この施設の運用を含めた柔軟性が示されていると感じられます。

建築の特徴

GYRE(渦)のコンセプトはこの建築そのもの。地上5階建ての各平面を交互に回転しながら配置し、ズラすことで生まれた空間が通路や軒下となっており、単なる積層では出現しない空間や通路が各店舗に直接アクセスする回遊動線を作り出しています。正面性が強い建築が並ぶ表参道にあって、特定の方向性を持たない建築のあり方を示しているように思います。

壁は押出成形セメント板に焦げ茶色のタイルが貼られており、大胆な形状に対して落ち着きのある表面を作り出しています。タイルはフラットではなく、彫りのある表面で光の当たり方により面ごとに異なる表情を外部に与えています。とりわけ隣接する「ディオール表参道」が強力な白い筐体が既存として存在しており、この対比としてGYREがあるように感じます。

 

参道側のファサード。
Dior表参道。白と黒が対比する。
「まつだい雪国農耕文化村センター農舞台」MVRDV国内初作品。地面と接するのは4方の角のアーム部分のみ。

GYRE.FOOD

GYRE.FOODは建築家の田根剛氏が手がけています。4階のスペースはフレンチ「élan (エラン)」、ダイニング「EUREKA(ユーリカ)」、バー「fünklein(フュンクライン)」、グロッサリー「eatrip soil(イートリップ・ソイル)」と4つのスペースに分かれており多様なコンセプトのFOODを、自然をテーマとした緑と土壁のインテリアのなかで楽しむことができます。

アクセス

JR原宿駅より徒歩3分、東京メトロ表参道駅から徒歩4分。