真狩村の小さなパン屋 ブランジェリージン(Boulangerie JIN)

真狩村の小さなパン屋 ブランジェリージン(Boulangerie JIN)

建築

真狩村の小さなパン屋

北海道真狩村にある小さなパン屋。羊蹄山を北側に眺める麓の畑の中にひっそりとした佇まいの小屋があります。

国道からも離れており、仮に店の前を通ったとしてもそこがパン屋だと気づく人も少ない、店を目指しても迷うくらいの場所にあります。

「ブランジェリージン」は知る人ぞ知るパン店。そこで提供される焼き立てのパンは北海道の小麦や酵母にこだわり、羊蹄山の自然から生み出される旨みを最大限に引き出された一品のパンです。

パン屋の手紙

黒に塗られた外壁の前に隙間なく薪が積み上げられています。窓をかわすように積まれていて薪自身がこの小屋の外観を作り上げています。薪はパン釜の燃料のため、日々の使用によって薪の量が変化する、すなわちパン屋の稼働がこの小屋の立面の時間的な変化を外部に与えている訳です。

この小屋を設計したのは中村好文さん。「建築家」ですが「住宅作家」というほうがいいかもしれません。住宅や別荘の小屋建築に重きを置いている方です。

この建物の生い立ちは一冊の本になっています。その名も「パン屋の手紙」。あるパン職人自らがパン工房の設計を中村さんに設計依頼の書簡を送るところからスタート。文通によるヤリトリで設計が進められ建築に至る話が書籍化されています。共著者はそのパン職人であり、店のオーナーでもある「JIN」さんという訳です。

書籍「パン屋の手紙」。設計の意思疎通はほぼ文通によって行われた。

売り場の面積は驚くほど小さく出来ています。僅か4.5畳ほどのスペースは1組の客と作り立てのパン、店員だけで一杯になります。店内への入店は1組づつしか入れず、入口にも注意書きがあります。

パンは「クロワッサン」を代表作として「パン・オ・ショコラ」など種類が豊富な訳ではありませんが、パンから漂う香りや艶やかさなどから、ただのパンではないことに気付かされます。

小麦の香りや甘み、そして大地から生み出される水、空気、薪の熱量などすべてが職人さんの手によって、まるで一品生産のように一つ一つのパンに閉じ込められつつ焼かれています。