渡辺誠「つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅」乱流と層流-アルゴリズムが造り出す駅の表層

渡辺誠「つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅」乱流と層流-アルゴリズムが造り出す駅の表層

2021年3月3日

概要

柏の葉キャンパス駅」は千葉県柏市にあるつくばエクスプレスの駅。柏の葉は「環境共生都市、健康長寿都市、新産業創造都市」という3つの柱のもと、官・公・学の連携により整備・運営が進められています。特に駅周辺には「ららぽーと柏の葉」、「柏の葉 T-SITE」、「KOIL」、「東京大学柏の葉キャンパス駅前サテライト」などの施設が整備されスマートシティとしての持続的な成長を続けており、当建物はその中心的な役割を担っていきます。

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設計

建物の設計は「渡辺誠」。渡辺氏は横浜国立大学を卒業後、磯崎新アトリエで経て独立し、渡辺誠/アーキテクツオフィスを設立。岡山県立大学なとで教授を務めながら、東京都市大学で教授を務めるプロフェッサーアーキテクトとして活動しています。

本駅と隣り合う「柏たなか」駅、九州新幹線「新水俣駅」、「大江戸線水道橋駅」の階段空間などの駅舎の設計しているほか、代表作として「青山製図専門学校1号館」があります。

建築の特徴

建築家の渡辺誠氏はアルゴリズムアーキテクチャーの先駆けとして知られており、PCによって生成される形状を建築化していく手法により作品を手がけてきました。柏の葉キャンパス駅は建築というよりは、リニアな高架線路の中間点にある昇降口に過ぎず、ホームを覆う外殻であるという前提のもとファサードをアルゴリズムによって創出していく設計手法が採用されました。

駅名ともなっているように「柏の葉」・「キャンパス」という2つのヒントを手がかりに「自然」と「科学」という2面性をAIによって、それぞれの立面に表現することを目標としました。プログラム化にはさらに「乱流」と「層流」というキーワードを付加し、深化された形態が出力されました。

柏の葉キャンパスは新駅というだけでなく、「新線の新駅」ということもあって、当時は周囲には何もない中に突如、高架と白い駅が地に現れました。街は長い時間軸の中で駅を中心とした開発が極めて商業的になされていきますが、その成長の芽となる初期の姿をコンピュータデザインに委ねることによって、ある意味どこにも誘導しない都市開発の一つの解答であるようにも思います。

柏の葉キャンパスはディベロッパーの三井不動産や自治体、産学の努力もあるとは思いますが、つくばエクスプレス20駅の中でも、街づくりとしては統制の取れた、また調和された駅前として醸成されようとしています。

PCによって生成された形態はGRCパネルとして具現化された。
白いファサードに赤いTXのサインが映える

「ららぽーと柏の葉」と向き合う。一見、左が駅で右が商業施設のようにも見える。
ホーム側から見たパネル。パネルは部分的に現しとなっている。開口部(窓)は採光や排煙として機能する。