概要
「PRADA青山店」は東京都港区にあるファッションブランドPRADAの国内旗艦店。表参道の延長にあり、世界的に有名なブランド店が軒を並べるエリアに位置しています。「エピセンター」と言われるインターナショナルブランドの「発信地」として20年近いキャリアを築いていますが、未だに色褪せる気配は感じられません。
格子状のガラスが全面に押し出されたその表情からは窺い知れないほどの建築技術が凝縮されています。
設計
設計は「ヘルツォーク&ド・ムーロン」。スイスのジャック・ヘルツォークとピエール・ド・ムーロンによる設計ユニットで2001年に建築界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」を受賞しています。代表作として北京オリンピックのメインスタジアム「北京国家体育場」、ドイツのサッカー場でバイエルンミュンヘンの本拠地である「アリアンツ・アレーナ」、旧発電所を美術館に改修した「テートモダン」などがあり、「PRADA青山店」の正面にある「MIUMIU青山店」も同ユニットが手がけています。PRADA青山店は2003年に完成しましたが、ヘルツォーク&ド・ムーロンの国内初作品となること、青山のプラダの旗艦店ということもあり当時大きな話題を集めました。2020年には銀座マロニエゲートにオープンした「UNIQLO TOKYO」の内装デザイン監修をしています。
ヘルツォーク&ド・ムーロン「UNIQLO TOKYO」外国人建築ユニットによる旧プランタン銀座リノベーション
実施設計は施工者でもある「竹中工務店」が担当。原宿・表参道エリアでは「東急プラザ(中村拓志)」、「tod’s(伊東豊雄)」、「GYRE(MVRDV)」など豊富な実績を持っています。
"ヘルツォーク&ド・ムーロン"MIUMIU青山店 ステンレス鋼板により覆われたバッグから覗くアイテム
建築の特徴
国内で最も斬新的な建築が並ぶ表参道や青山にあっても、このガラス体は周囲に対して特別なインパクトを放っています。ダイアゴナルフレームと言われる黒い斜め格子に膨らみのあるガラスブロックが嵌め込まれています。外部からは店内の様子がガラス体によって可変しながら透過、内部からは外部の景色が歪みとなって映し出されています。ガラスの透過性という最大の特徴をある意味歪めた形で内外に表出しています。夜間には内部の照明の光がガラスに一つ一つ光が溜め込まれ、外部に対する照明装置として機能することになります。ファッションブランドストアは夜間の注目性や集客性を考えれば十分に理解できる操作です。
外観からは伺い知ることができませんが、この建築は「免震構造」を採用しています。免震構造というとビルや病院、タワーマンションなどで採用されるケースは増えてきていますが、この規模の商業施設で採用されるケースは稀だと思います。
免震構造は地面と建物の間に免震ゴムが挟まれているため、大地震でも上部の建物側に地震のエネルギーが伝わり難いという特性を持っています。地震時の建物被害が小さいことから、一般的には大地震が来ても使用し続けることができることを理由に採用されます。防災面でのウリとして用いられる訳です。
一方、この建物はガラスが全面的に用いられており、地震時の揺れ幅の上限が設定されてきます。ダイアゴナルフレームだけでは地震に対しては十分な耐力が無いことから免震構造を採用しています。つまり、意匠上のデザインから免震構造を使う必要が生じているという訳です。
アクセス
東京メトロ半蔵門線、千代田線「表参道駅」から徒歩3分。