概要
建築時は「TOD’S表参道ビル」としてイタリアの高級ファッションブランド「TOD’S」の日本旗艦店として2004年に完成。2020年になりグッチ、イブサンローランなどのインターナショナルブランドを持つフランスのファッション大手「ケリング」の日本法人の社屋としてリブランド・内装リファインされました。ビルのサインにはブランドの一つである「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」のロゴがあしらわれています。
設計
建物の設計は「伊東豊雄建築建築設計事務所」。伊藤氏は2013年に建築界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」を受賞。代表作として「仙台メディアテーク(仙台市)」、「松本市民芸術館(松本市)」、「信毎メディアガーデン(松本市)」、「多摩美術大学図書館」などがあり、国内外問わず数多くの作品を創出、現在「新水戸市民会館」が建設中であるなど、第一線の活躍を続けています。
内装は日本で活躍する女性建築家「ファラ・タライエ」氏が手がけました。ファラ氏はイラン生まれでイタリアを始めとした複数の国に滞在し、その中でも日本の持つ伝統的な魅力に惹きつけられ、現在では日本を中心とした活動をしています。
竹中工務店は国内最大手のゼネコンの一つで、原宿・表参道エリアでの実績も多く「GYRE」、「PRADA青山店」、「MIUMIU青山店」、「Apple Store 表参道」など複数の有名物件で施工を手がけています。
2023年4月完成予定 伊東豊雄"新水戸市民会館"水戸芸術館に隣接するやぐら広場のある木質系新市民ホール
建築の特徴
表参道の代名詞である「ケヤキ」の姿を建築により表現するという前衛的なデザインがなされています。9本のケヤキを図面の中で6面に再配置して、木々の幹が構造のフレームに置き換えられています。
鉄筋コンクリートのフレームを斜め格子に組み、開口部にはガラスが枠無しで設置されています。自然の木々のそうであるように、幹が地に近いほど太く、伸びるほど細い姿が表面化されより生命感が感じられます。建築構造は下階の柱は太く、上階の柱は細くすることが可能です。「可能」と書いたのは、上下階で柱の太さが異なると様々な仕上げの違いが出てくるため、近年では同一寸法で立ち上げることが少なくありません。そういう意味でもこのフレームは地球の重力に対して自然の成長を魅せるとともに、構造力学的にも合理的な姿を表層化した建築と言えますが、基礎に免震構造を採用されていることからも、商業施設として一定の開口部を維持する上では、フレームだけでは耐力が十分でないとも言えるかもしれません。
表参道ではケヤキへの視線や映り込み、高さを意識した建築がいくつかありますが、ケヤキそのものを建築に焼き直すという発想とこれを実現する力には感嘆しかありません。
今回のように主体構造とデザインを一致させる手法は銀座の「ミキモト2」でも実現されています。本建物は鉄筋コンクリートフレームですが、ミキモトでは鋼板パネル自体を構造体として用いた先駆的な工法によりデザインされています。