概要
「大田区休養村とうぶ」は長野県東御市にある宿泊施設で東京都大田区が運営する公共の宿です。東御(とうみ)市は長野県東信エリアにあり、2004年に東部町と御牧野村が合併して誕生した人口約3万人の街。本施設は大田区区民の休養や課外活動を主目的として計画・建設され1998年に完成、東部町時代にオープンしていることから現在でも「とうぶ」の名が用いられています。
東御は浅間山麓に広がる「湯の丸高原」があり、「ワインの里」と呼ばれるほど葡萄の生産に適した風土を持っており、周辺にも複数のワイナリーがある長野有数のワイン生産エリアとなっています。施設の徒歩圏内にもワイナリー「アルカンヴィーニュ」、近距離に「ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリー」などがあります。
設計
建物の設計は「伊東豊雄建築建築設計事務所」。伊藤氏は2013年に建築界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」を受賞。代表作として「仙台メディアテーク(仙台市)」、「多摩美術大学図書館」、「長岡リリックホール」などがあり、国内外問わず数多くの作品を創出、現在でも第一線の活躍を続けています。幼少期に下諏訪町で過ごした時期があり長野県にゆかりのある建築家として知られ、「下諏訪町立諏訪湖博物館・赤彦記念館」(下諏訪町)「まつもと市民芸術館」(松本市)、「信毎メディアガーデン」(松本市)などの設計実績があります。
2023年4月完成予定 伊東豊雄"新水戸市民会館"水戸芸術館に隣接するやぐら広場のある木質系新市民ホール
建築の特徴
広大な自然の傾斜を活かして、極力地形に沿うような建築は300mもある長大な三日月型あるいはブーメラン型の建築となりました。衛星写真でみると一目瞭然で、その形状とスケール感に圧倒されます。
建築両端での高低差は約20mあり、300mで割ると1/15勾配、カーブ含めた高低差ではさらに緩い勾配となります。1/15から1/20という勾配は建築歩行用スロープとしては適度な角度であり、片廊下式のシンプルなプランニングと傾斜通路は自然の山なりを登り降りする登山やハイキングのように、建物内でありながら外部のような体験することができます。
また、通路部分を意図的にカーブさせる建築は近年イオンなどの大型ショッピングセンターで見ることができます。商業施設では以前は直線的なプランニングが主流でしたが、通路がカーブを描くことで、先をあえて見通させず、奥行感をより強調。歩行と合わせて視界に入ってくる各店舗の既視感がショッピングを飽きさせない工夫となって、全国のイオンなどで標準化されつつあります。
一方で、海辺のホテルによく見られるように、どの部屋からでも良い景色を眺められる手法として、円の外側に部屋を配したプランニングの方が一般的と言えます。「ヒルトンニセコビレッジ」などがそうであるように海外リゾートなどではお馴染みかもしれません。本建築は内外の動線が上記とは逆転しているため、景観的には自らの建物の外観も視線に入ってきます。景観とともに自然形状に沿った建築の姿が楽しめ、主に団体利用宿泊者は一体感や安心感が生まれてくるのかもしれません。
アクセス
住所:〒389-0505 長野県東御市和6733-1
電車:北陸新幹線「JR上田駅」より迎えバス有り
車:上信越道「東部湯の丸IC」より7km