“雪の日本酒冷蔵庫”八海山雪室

“雪の日本酒冷蔵庫”八海山雪室

建築

概要

八海山雪室は新潟県魚沼市にある八海醸造「魚沼の里」内にある日本酒や焼酎のための天然雪による保冷施設。里には酒造施設をはじめとして、蕎麦屋「長森」、和菓子「さとや」、八海山みんなの社員食堂、猿倉山ビール醸造所、さとやベーカリーなど日本酒の仕込み水を使用した食などが楽しめる場が用意されています。

設計・施工

設計はKAJIMA DESIGN(星野時彦氏)。施工は鹿島建設。KAJIMA DESIGNは鹿島建設の設計部門で、高い施工技術に裏打ちされた設計技量に定評があります。世界的にみて設計は設計事務所、施工はゼネコンという分業スタイルが一般的である一方で、国内の大手ゼネコンには組織としての設計部を古くから有しており、民間事業を中心にビルや商業施設、タワーマンション、研究施設、工場など多くの作品を残しています。

大手のゼネコンは公共工事の設計が原則、受注できないため、世間的な知名度(公共建築が少ない)が上がりにくいという側面を持っています。これは公共的なプロジェクトの設計や施工の入札を分業により公募しており、設計と施工の会社は同一の会社や資本関係にある組織は両方の業務を受注できないためです。

鹿島建設(KAJIMA DESIGN)は三菱電機やCANON、資生堂、イオン、アステラス製薬、中外製薬などの大企業案件を引き受けている傾向にあります。八海醸造「魚沼の里」では雪室の他、猿倉山ビール醸造所も手掛けています。

雪室(ゆきむろ)の特徴

雪室(ゆきむろ)とは積雪地域に古くから伝わる自然活用文化で、雪の大きな塊を茅や藁などで、食品などと一緒に覆い断熱化することで春先からの天然の冷蔵庫とする手法。新潟県魚沼地区は国内を代表する豪雪地帯で冬季には3mを超える積雪となることも少なくなく、雪室文化が古くから根付いていた背景もあり、今回は現代的な技術や室と合わせながら日本酒の保冷倉庫として計画されました。

雪室は建物の1/3ほどの面積があり、約1000tの雪を蓄えることができます。雪室からは機械換気により隣の雪中貯蔵庫に冷えた空気が送られます。これにより貯蔵庫の温度は一定して4度前後を保つことができ、高い湿度も相まり、日本酒や焼酎の保存・熟生に適した環境になっています。

これだけの貯蔵庫を電気などに頼ると非常に大きいエネルギーを消費することになりますが、建物の脇に降り積もったたくさんの雪を建物の中に引き込むだけで、年間通して使える天然の冷蔵庫が成立しうるのも、この魚沼という地理的なメリットを多分に活かせる場だからこそと言えます。

片流れの大きな屋根が魚沼の里の風景に溶け込む。この形状は3m近い積雪を建物前面に自然落下させる機能的な面も持つ。深い庇は雁木と言われる工法を鉄筋コンクリートにより返還させたもの。
八海山雪室のプラン。雪中貯蔵庫に1000tの雪が右側の搬入口から投入される。左側の千年こうじやでは、日本酒はもちろん自社生産の加工食品などが購入可能。ゆきなかキッチンはカフェメニューが楽しめる。見学の受付もここ。2階のokatteでは地場の特産品などが展示販売されている。
エントランスを望む。庇は鉄筋コンクリートによる雁木工法により持ち出されている。
雪室には1000tの雪が保存可能。雪の不純物が上層に溜まっていく。毎年2月に雪入れが行われる。一年後には約半分の量の雪が残り、また新たな雪が継ぎ足されていく。
雪室は年間通して約4度を維持する。人口の冷蔵庫より体感的に寒くない「和らぎのある寒さ」が感じられる。雪のかまくらの内部ざ寒い感じがしないのに通じる。
雪室の見学後は八海山を始めとした日本酒、焼酎、甘酒の試飲が楽しめる。奥には樽で熟成保存される焼酎ラックがある。

アクセス

関越自動車道六日町ICより約15分。公共交通機関はありません。