概要
「GINZA MAISON HERMES」は東京都中央区銀座にある商業施設でインターナショナルブランド「HERMES」の国内唯一の旗艦店。「HERMES」はフランスの馬具製造を起源とし、現在はバッグを中心としてアクセサリーやアパレルなど幅広い商品展開を行なっており、国内においても非常にステータスの高いブランドの一つとなっています。
敷地は数寄屋橋交差点の一角にあり、2018年に交差点側にあったソニービルが解体されたことでエルメス銀座は交差点に対して、その全貌を表すこととなりました。
設計
建物の設計はイタリアの建築家「レンゾ・ピアノ」と「竹中工務店」の共同設計。レンゾ・ピアノ氏は「ポンピドゥーセンター」(フランス・パリ)や「フィアット・リンゴット工場再開発」(イタリア)、「関西国際空港旅客ターミナルビル」(大阪府泉佐野市)、「チバウ文化センター」(ニューカレドニア)など、そのどれもが名作とされる世界的建築家です。
レンゾ・ピアノ氏は特定の建築スタイルを持たない建築家として知られています。日本の建築家を例にとれば、安藤忠雄氏であればコンクリート打放し、隈研吾氏であれば木や石などの自然素材を前面に活用した建築が認知されているように、外観や内観などから建築家としての「作家性」が見えてくるものですが、レンゾ・ピアノ氏はそういったスタイルを否定的に捉えています。
「竹中工務店」はゼネコンとして施工を中心としながらも、高い技術力に裏打ちされた設計部門を保有しており、銀座エリアでは「資生堂銀座ビル」、「ゼニア銀座ビル」、「クロス銀座」など多数の実績があります。都内では有名外国人建築家とのコラボレーションも多数あり、青山の「PRADA青山店」、「MIUMIU青山店」では「ヘルツォーク&ドムーロン」との共同設計で話題となりました。
"ヘルツォーク&ド・ムーロン"MIUMIU青山店 ステンレス鋼板により覆われたバッグから覗くアイテム
建築の特徴
エルメスはここに「MAISON(家)」というコンセプトを与え、レンゾ・ピアノはそこに「ランタン」の灯火をイメージしてこの建築を表現しました。そのツールとして外観のほとんどが「ガラスブロック」により覆われています。450mm角のガラスブロックは外装面に約13,000枚使用されています。国内におけるガラスブロック建築はこれまで住宅や小規模商業施設など比較的小さい建築に用いられてきましたが、ここまでの規模で使用されたのは世界的にも稀と言えると思います。
銀座のブランド建築はその視認性やショーケース化が求められるため、必然的にガラス建築となっているケースが非常に多いように感じられます。レンゾ・ピアノ氏は単純に透明ガラスで透過させるのではなく、全面的にガラスブロックを利用することで、ブロックを経由してモザイク的に内部が外部に写しだされる効果を与えているように見えます。一方で、ブランドがモザイク化され、ベールに包まれたようはシークレットな印象と捉えることも出来、見る者の感受性に委ねているという見方も出来ます。