概要
「国際こども図書館」は東京都台東区上野公園にある国立国会図書館の支部として2000年に開設された図書館。旧帝国図書館をリノベーションし、現在は児童向けの国立図書館として運営されています。「東京都選定歴史的建造物」に指定されている建物は極力保存しながらも、安全性を高める工事が行われ「こども図書館」として再生・活用が図られました。
設計
改修設計者は安藤忠雄建築研究所と日建設計の共同設計。安藤忠雄氏は日本のみならず世界的な活躍により、高い評価を受けきた建築家。独学により建築を学んだとされ、1970年代にコンクリート打放しの個人住宅を中心に作品を生み出しました。出身である関西エリアを中心として活動を始め、その作品は全国、そして世界に広がりました。日本国内での人気はさることながら、海外における知名度、人気の高さは非常に高いものがあります。90年代には、その実績からイエール大学、ハーバード大学、コロンビア大学の客員教授を歴任し、1997年には東京大学建築学科教授に就きました。学歴ではなく建築作品という実績一本でその職に就く事実からも安藤氏の並外れた建築に対する姿勢や実作の持つ力が高く評価されていることを物語っています。
東京都内では「表参道ヒルズ」、「DESIGN SIGHT」、「東急東横線渋谷駅」、「東京大学・情報学環 福武ホール」、「東急大井町線上野毛駅」、「東京アートミュージアム」、「調布市せんがわ劇場」など実作多数。図書館としては「こども本の森 中之島(大阪市)」が2020年3月にオープンしているほか、「十和田市教育プラザ(青森県)」、「新潟市立豊栄図書館」、「絵本美術館 まどのそとのそのまたむこう(福島県いわき市)」などがあります。
教会建築として「水の教会」、「光の教会」、「風の教会」が同氏の3部作と言われています。今回のような改修案件では現在パリの歴史的建造物である「ブルス・ドゥ・コメルス(商品取引所)」を現代美術館に改修する工事が行われています。
旧帝国図書館は文部省(現文部科学省)の技師であった「久留正道」らによって設計されました。久留正道は大学施設や学校建築を中心とした設計に数多く携わり、日本国内における西洋音楽ホールの原型であり、旧帝国図書館からもほど近い「旧東京音楽学校(現東京芸術大学)泰楽堂」の共同設計者として知られています。
建築の特徴
旧帝国図書館であるレンガ棟を改修、その内側に新たにアーチ棟を2015年に新設しています。レンガ棟は灰色の石、ベージュ色の化粧レンガはフランス積みにより外観が構成され、ルネサンス様式によりまとめられています。改修では建物の骨格を極力保存しながら免震構造レトロフィットが採用され、意匠面でも既存の保存を意識しつつ、エントランス廻りと中庭のガラスボックス(カフェテリア)、中庭に面した2階のファサードにかけられたガラスカーテンウォール(ラウンジ)により新たな価値が付加されました。レンガ棟は主に開架室として1階に「こどもの部屋」、「せかいの部屋」、「おはなしの部屋」が設けられ、2階にはギャラリーや中高生向けの「調べものの部屋」、3階は旧閲覧室を色濃く残した「本のミュージアム」があります。
「アーチ棟」は新設された建物で地上2階、地下3階として地階を主に書庫スペースとして、地上は研修室でまとめられています。レンガ棟を中心として円を描くように配置されています
アクセス
JR上野駅より上野公園経由で徒歩10分。