概要
十日町博物館は2020年6月に完成した新博物館。隣接地で40年近く運営された旧博物館は老朽化と耐震性不足から建替えが検討され、平成27年に新博物館の基本計画がまとめられました。その後、基本設計・実施設計を経て、2020年にオープンにしました。
「市民・来館者とともに考え、活動し、成長する博物館」をテーマに「火焔型土器」(国宝)、「織物」、「信濃川と雪」の常設展示、博物館や地域の歴史・文化に関わる普及活動を行なっていく博物館作りを目指しています。新潟県の信濃川流域では縄文式土器が多く発掘されています。中でも「火焔型土器」は燃え上がる炎のような装飾が特徴の縄文式土器です。「織物」は雪深い地域を背景とした織物文化が長い間継承され、信濃川流域では独自の「雪」生活様式が定着してきました。
設計
設計は石本建築事務所。国内大手の設計事務所で、博物館や美術館、図書館などの文化施設の設計はもちろん、大学などの教育施設、体育館など幅広い用途の設計を全国的に行なっています。同事務所は石本喜久雄を創業者とする組織設計事務所で、新潟県内では「魚沼市庁舎」、「上越市市民交流施設高田公園オーレンプラザ」、「プレスポ胎内」などの設計を手掛けています。
業務は3社JVによりまとめられました。基本計画の策定を行なった「トータルメディア開発研究所」が展示空間設計を担い、地元からは「阿部設計」が加わりました。
JVは共同企業体を意味し、複数の会社がそれぞれの強みを生かしながら設計をまとめるチームとして構成されます。今回の場合、大手事務所(全体意匠・統括)+展示設計(博物館展示空間)+地元事務所(地域特性)という、それぞれの長所を組み合わせたチームと見ていいでしょう。
建築の特徴
前面に貼られた雪止めの白いパンチングメタルは雪の結晶を表層に出し、カーブした形状は博物館の展示物でもある織物をイメージしています。
この浮遊するデザインは見た目だけではなく、熱い夏は日除けスペースとして、また雪深い冬には雪避けスペースとして、様々なイベントに活用できます。
十日町の建築
十日町は2003年の越後妻有アートトリエンナーレを起点として、これまで7回開催をしています。アートと建築は密接な関係にあり、十日町では建築もアートと捉え、市内には様々な建築が点在しています。「十日町情報館(内藤廣)」は本博物館と隣接、十日町の文化施設の集積地となっています。「まつだい雪国農耕文化村センター農舞台(MVRDV)」はMVRDV(オランダの建築デザインユニット)の日本初作品、北越急行松代駅の目の前に現れた白色のインポートデザインは大きな注目を集めました。このほか、「越後妻有里山現代美術館キナーレ(原広司)」、「十日町産業文化発信館いこて(手塚貴晴+手塚由比 手塚建築研究所)」など見所が豊富となっています。
アクセス
電車は北越急行ほくほく線十日町駅から徒歩13分。車では関越自動車道六日町ICより約20km、約30分。