概要
「Apple Store 表参道」は東京都渋谷区神南表参道にあるアップルの直営店。アップル直営店は東京に5店舗(丸の内、新宿、渋谷、銀座、表参道)、川崎、大阪、京都、名古屋、福岡にそれぞれ1店舗と全国に10店舗あります。
設計
建物の設計は米の建築設計事務所「Bohlin Cywinski Jackson(ボーリン・シウィンスキー・ジャクソン)」(以下、「BCJ」)と「光井純 & アソシエーツ 建築設計事務所」が手掛けています。BCJはApple銀座の基本設計も手掛けているほか、世界中のApple STOREの設計で知られています。ニューヨーク5番街のアップルストアは店舗が地下にあることを逆手に、地上部にAppleのロゴがプリントされたガラスボックスだけを「置いた」シンプルな発想によりデザインされ、Appleの世界観と一致したセンスを垣間見ることができます。Apple物件のほか、マイクロソフト創業者「ビルゲイツ」の自宅なども受注するなど、IT大手や企業案件を数多く手がけていることからも、企業姿勢等を的確に反映した設計理念が評価されていると捉えることができます。
表参道は銀座と並び「建築家のショールーム」として「表参道ヒルズ」、「PLADA青山店」、「MIUMIU青山店」など数々の有名建築家による作品が軒を並べています。このようなエリアの中、固有の建築家名に依らない、米の組織設計事務所の作品は異色の存在と言えるかもしれません。施工者は「竹中工務店」が担当。原宿・表参道エリアでは「東急プラザ表参道原宿」、「TOD’S表参道(伊東豊雄)」、「GYRE」など実績多数となっています。
"ヘルツォーク&ド・ムーロン"MIUMIU青山店 ステンレス鋼板により覆われたバッグから覗くアイテム
"MVRDV"GYRE(ジャイア)オランダのユニットが設計した渦のように回転しながら上層階へ誘導する建築
建築の特徴
ガラスだけによって仕切られた店舗空間が表参道のケヤキ並木の前にあります。建築があるというよりも外に「ガラスに仕切られたスペース」がある、という表現の方がしっくりくるほど、フレームレスな空間が展開されています。10mに抑えられた軒高にはステンレスの屋根が奥の壁面から片持ちで支持されており、この工法により正面に柱を出さない空間構成が可能となっています。
表参道の主役は建築ではなく、広く高く成長したケヤキである、という見方によりケヤキより建築の高さを抑え、ガラス化により内外の関係をシームレスとし、建築の濃度を極力抑えつつ自然を意識させています。表参道が商業的に容積率を最大限に使いながら、建築として昼と夜の集客性を重視することが求められるなかにあって、Appleの姿はその逆説を現しているとも見てとれます。
上部に軽い印象のステンレス屋根がかかる様子は、MacBookのバックパネルが軽やかに置かれたように印象で、目立たないながらも、Appleの持つ世界観と一致した外観となっています。表参道・原宿エリアはファッションや貴金属ブランドの旗艦店が立ち並び、ブランドの発信拠点としてデザインを競い合う姿が見て取れますが、その中にあってもシンプルな素材感と自然環境の調和が高いレベルで維持されているように感じられます。