概要
ニセコアンヌプリの麓に広がる緑の牧草の中に赤や黒の小屋がリズミカルに立ち並び、周辺の山並みと見事に呼応する風景が広がっています。
北海道ニセコ町にある高橋牧場では乳製品を中心としたヨーグルトやチーズ、アイスクリームの加工販売、レストランの経営を行っています。早くから農業の法人化に取り組み、生産、加工、販売を一体的に行う経営手法は多くの農業法人の手本にもなっています。
建物の特徴
個性のある建物は牧場と向き合うように配置されつつも、建物どおりが語り合うかのように結びつき、多様な風景を作り出しています。
配置によって赤と黒でまとめ、統一感とコントラストを作り出してニセコのスタイルにもよくマッチしています。
レストラン「プラティーヴォ」は建築家中村好文さんによる「作品」として有名です。中村好文さんは吉田五十八賞や吉岡賞も受賞している建築家(兼日大教授)で、住みやすさや居心地の良さといった面を重視する住宅や別荘を最も得意とされている「住宅作家」です。
隣の真狩村にあるパン店「ブランジェリージン」も中村氏による設計。店主との交換日記で設計が進められ、その流れが一冊の本となった伝説のパン屋です。パンは北海道随一の人気を誇ります。
PCによる設計が常識化している現代にあって今なお、手書きによる設計を貫いておられる点は敬意を表さずにはいられません。
その人間の手書き図面から生み出される建築の温かみは正にヒューマンスケールの範囲を超えることはなく、建築ごと使い手に馴染んでいく姿があります。
切妻形状の屋根に外壁を焼杉で仕上げ、屋根から立ち上がる煙突が建物の印象を柔らげ、周辺の風景に溶け込んでいます。
海外の観光地ではデザインコードを外さず統一感のある景観を作り出しています。同様にニセコエリアでは黒を基調としたデザインの建物を非常に多く目にすることができます。町全体としてそれぞれが主張しすぎず「ドレスコード」をまとった姿は観光地としてのまとまりを良くしています。残念ながら日本の観光地は商業主義的な印象を受ける建物や広告が多いと思います。
この高橋牧場の立ち振る舞いはニセコエリアにおける、その先駆けに位置すると言ってもいいのではないでしょうか。