概要
「LOUIS VUITTON 銀座並木通り店」は東京都中央区銀座にあるファッションブランド「LOUIS VUITTON」の直営店で1981年に国内第1号としてオープン。建て替えのため、一時移転していましたが2021年3月にオープンしました。
設計
建築設計は「青木淳(AS)」。東京大学を卒業後、磯崎新アトリエの勤務を経て独立、新潟県の「遊水館」や「潟博物館」などで実績を固め、国際コンペの「青森県立美術館」で最優秀案となり、近年では「京都市京セラ美術館」、「松本平広域公園陸上競技場」の設計プロポーザルで最適候補者となるなど第一線で活躍を続けています。

とりわけ、ルイヴィトンの店舗設計との関係は特筆すべきものがあります。「LOUIS VUITTON 名古屋栄店」を始めとして、「LOUIS VUITTON 松屋銀座店」、「LOUIS VUITTON 六本木ヒルズ店」、「LOUIS VUITTON ニューヨーク」、「LOUIS VUITTON 香港ランドマーク店」、「LOUIS VUITTON 博多店」、「LOUIS VUITTON 大阪御堂筋店」とこれまで同社の8以上の店舗で設計に携わってきましました。

青木淳「LOUIS VUITTON 銀座松屋店」壁面に表現されたブランドコード"ダミエパターン"
「LOUIS VUITTON 銀座並木通り店」は青木氏により2004年に外装デザインを行われており、今回は同一敷地の物件で2回目の設計になります。建て替え後に同じ設計者が選定されることは極めて稀であると言えます。一般的に建築物の耐用年数より、建築家としてのキャリアの方が短いことや、取り壊される運命にある建築はユーザーサイドから見てデザイン性やフレキシブル性に何らかの要因があるケースが少なくないためです。かつては旧東京都庁舎を設計した丹下健三氏が現東京都庁舎を設計したような事例はありますが、商業施設では過去に例を見ないかもしれません。それだけ、ルイヴィトン社からデザインが評価されているとともに、パートナーとして信頼されている証ともとれます。
内装設計は分業により、ピーターマリノ氏が手がけています。ピーターマリノ氏はブルガリ、シャネル、クリスチャン・ディオールなど、世界中の有名ブランドのデザインを手掛けいます。施工は「清水建設」が担当しました。
建築の特徴
さざ波を立てたようなガラスが全面に貼られている姿は、様々な現代的建築物が立ち並び多数のガラスファサード建築がある銀座にあっても、強烈なインパクトを放っています。「水の柱」を外観コンセプトとしたこの建物は6種類の波型ガラスを組み合わせて表現されています。
特にガラスから放たれる複層的なカラーリングには驚かされます。ガラスは水色でありながら、角度によりゴールドにも見えるオレンジを発色しています。ガラスは二重化されており、外部側には波打ちのガラス、内部には複層ガラスが貼られています。このうち、内部の複層ガラスに特殊な「ダイクロイック」という加工を施すことによって、この反射発色は実現しています。
ダイクロイックは特定の波長を反射する仕組みで、テレビやプロジェクターの色分解の手法として用いられるほか、ダイクロガラス・ミラーは主に装飾品のガラス表層加工技術として用いられてきました。建築としての採用は世界的に見ても事例がないと言われています。
銀座におけるガラスファサード建築は夜間に内部照明の光が外部に対する照明装置として効果を発揮することになりますが、この建築は「昼の発色効果」も最大限に発揮している点で、銀座の中でも注目度の高い建築になっています。ヘルツォーク&ドムーロンが青山(PLADA青山店)で20年前に見せたような次元の輝きが見てとれます。



