魅力度ランキング2018 茨城県最下位を分析

2019年2月9日

6年連続最下位の現実と弊害

秋の風物詩の一つとなりつつある毎年10月に公表される「都道府県魅力度ランキング」。最近では記事の見出しに「茨城県。6年連続最下位」という肩書きが付くことも多くなりました。北海道のトップは当然となっている現在、不名誉な方が注目される現実にさらされています。

ある意味トップを独走する北海道より先に大きく報じられること自体オイシイとの考え方もあり、一時は茨城県もそれを逆手にとってPRしたこともありましたが結果はでていません。

最近では茨城県の魅力を最前線で発信して行くべき立場の県営業戦略部長が「水戸はダメだな」とSNSでコメントして炎上していました。

車メーカーの営業本部長が「我が社のクルマはダメだ」と言ってるようなものです。「(こんな組織だから県の魅力が上がらないんだ)水戸(市?)はダメだな」という意図ではないか、という憶測もありましたが、組織批判でもNGととられてしまいます。

魅力なんてランキングがすべてではないし、気にする必要もないと考えていましたが、「最低ランク」という結果だけが報じられ続けることで悪い印象が上塗りされるのではないかという不安を持つようになりました。

ある商品がインターネットの口コミで酷評されていれば消費者は敬遠するかもしれないし、「買ってはいけない」系の記事に取り上げでもしたらメーカーも黙ってはいません。

真の魅力を向上させることはもちろん必要ですがこればかりは短期的に改善できることではありません。本筋ではないかもしれませんが、これと並行して報じられ方を意識したPRも積極的に行う必要があるのではないでしょうか。

魅力度ランキングとは

魅力度ランキングとは地域調査を専門とするコンサルティング会社「ブランド総合研究所」が毎年10月、インターネットで国内3万人に対して行うアンケートを元にランキング化したものです。

ランキング自体が大きく報じられることで調査方法まで解説されることは少ないのですが、実は「魅力度」は84項目ある調査のうちの一つに過ぎません。

私自身も魅力度に関する総合的な指標をランキング化したものと勘違いしていました。

なぜこのような公表方法をとっているかですが、調査元であるブランド総合研究所は膨大な全体の調査結果の一部を公表し、魅力度以外の項目や詳細なデータは有償販売としているのです。

つまり一部のランキングが注目されることで有償部分の売上げの底上げになるということです。PCソフトの体験版や機能制限版などのようにお試しで使ってもらい、製品版を買ってもらう商慣習に似ていますね。

このランキングが注目されることで最も得するのは10年連続1位の北海道でもなく、もちろん6年連続最下位の茨城県でもなく、「ブランド総合研究所」とも言えるのです。

毎年同時期に公表、報道されることで「影響力のある地域調査ランキング」と解釈されてしまっています。ユーキャンの「流行語大賞」や清水寺の「今年の漢字」ように誰もが知っているイベントになりつつある、そんな感じでしょうか。

魅力度ランキングの数値化はどのようになっているか

ランキングを向上させるのであれば相手の懐を知る必要があります。魅力度ランキングとはどうのように点数化されているのか。分析していきたいと思います。

2018年のランキングは上位から1位北海道59.7点、2位京都52.2点、3位東京41.9点。下位から47位茨城県8.0点、46位徳島県9.8点、45位佐賀県11.3点となっています。

2018魅力度ランキング上位下位3県の点数
順位 都道府県 点数
1位 北海道 59.7点
2位 京都府 52.2点
3位 東京都 41.9点
45位 佐賀県 11,3点
46位 徳島県 9.8点
47位 茨城県 8.0点

これらの点数はどのように導き出されているのか、下の表のように都道府県の魅力度を5段階で聞いています。「とても魅力的」、「やや魅力的」、「どちらでもない」、「あまり魅力的でない」、「まったく魅力的でない」の5段階。このうち「とても魅力的」と「やや魅力的」の割合に下の係数をかけて点数化しています。

魅力度アンケートの区分と係数
とても魅力的 1.0
やや魅力的 0.5
どちらでもない 0
あまり魅力的でない 0
全く魅力的でない 0

2017年に栃木県が公表していた資料を例にとるとこの年の栃木県の順位点数は43位10.3点。内訳は「とても魅力的」1.7%、「やや魅力的」17.3%、「どちらでもない」53.6%、「あまり魅力的でない」16.5%、「まったく魅力的でない」5.4%。このうち「とても魅力的1.7」と「やや魅力的17.3×0.5=8.65」の合計点数が1.7+8.65=10.35→10.3となります。

出典:栃木県公表地域ブランド調査2017資料
区分 係数(a) 回答比率(b) 点数

(a×b)

とても魅力的 1.0 1.7% 1.7
やや魅力的 0.5 17.3% 8.65
どちらでもない 0 53.6% 0
あまり魅力的でない 0 16.5% 0
全く魅力的でない 0 5.4% 0
総合点 10.35

この表からわかることは、

・魅力的か?と聞いているだけで何に対して魅力的なのかの判断は回答者に委ねられていること。漠然とした魅力を聞いている。

「どちらとも言えない」以下(下から3つの回答)のポイントはカットされていること。

過半は「どちらでもない」に分類。ここに区分されている以上は点数にならない。日本人の性格からして「知らなければどちらとも言えない」と回答することは想像に難しくない。

私だったら栃木はよく知っていて大好きなので「とても魅力的」に入れますが、徳島や佐賀は遠方ということもあり、評価できる材料を持っていないので「どちらとも言えない」に入れるでしょう。人によっては知らないので「あまり魅力的でない」に入れるかもしれません。

魅力度ランキングの点数をUPさせることができるか

点数化の方法が分かるとランキング向上の方策が見えてきます。

点数に得るには「とても魅力的」、「やや魅力的」の土俵に載せることが必要。

・「どちらとも言えない」は「判断材料を持っていない」と言い換えられる。判断材料がない限りは点数が上がる見込みはない。

・「どちらとも言えない」以下はポイントにならないのであれば多少のリスクを負っても判断材料を提供できる環境を用意する。

・人口の多い県に集中してPRを行う。アンケートの分母は都道府県の人口比となっているため大都市にポイントを絞ることも必要。

・魅力度をあげた県の事例を分析。

この10年で魅力度をUPさせた県とその理由とは

ブランド調査研究所はランキングと合わせて公表しているニュースリリースで10年間の点数推移を分析しています。この10年間でランキングをUPさせた上位3県は「石川県」、「広島県」、「愛知県」。これらの県は実際に点数をあげている実績があるため、この理由を紐解いて行くことは大きなヒントになります。

石川県
2009年 17位 17.4点
2018年 11位 25.7点

石川県がポイントをあげた大きい理由は「北陸新幹線」の開通(2015年)です。これは容易に想像ができます。新幹線開通により多くのメディアが金沢や石川県の話題に触れました。石川県はもともと地域資源や食などが豊富でしたが新幹線の開通により身近になり注目を浴びました。東京から金沢への移動はそれまで、東京→越後湯沢(新潟新幹線)→金沢(ほくほく線)で5時間程度かかっていましたが3時間未満に短縮されています。

茨城県も「茨城空港開港」や「つくばエクスプレス開通」といった県内交通の大きな転機を迎えました。これが魅力度に転化されたかというと、、結果の通りそうではなさそうです。

 

広島県
2009年 27位 12.9点
2018年 17位 20.2点

広島県。スポーツの街や歴史的建造物などが評価されています。広島カープの優勝が続いていることも高い効果があると考えられます。ポイントは球団名に「広島」と入っていること。これは重要です。

茨城はどうか。2018年にACLを制しアジア最強の座を得た「鹿島アントラーズ」。実力、実績ともに十分ですがプロ野球ほどの裾野の広さは持ち合わせていません。また、アントラーズには茨城の名称は入っておらず鹿島=茨城の構図が付きにくいという難点はあります。もともとJリーグは市をホームタウンとする側面が強いため「鹿島」としては成功しているのは確かです。

惜しくも引退していまいましたが20年ぶりの日本人横綱「稀勢の里」など材料はあったはずです。

 

愛知県
2009年 19位 16.4点
2018年 15位 23.2点

愛知県。魅力的な温泉やレジャー施設があることが評価されたようです。ひたちなか海浜公園は10年で来場客数を倍にするなど県内でも有数の観光地に引き上がられました。インバウンド需要の取り込みにも成果を見せています。

こうやって魅力度を向上させた実績を持つ県の理由を見て行くと茨城県もきっかけは持っていたのではないかと思います。もちろん各県の持つ地域資源の質や豊富さなどが異なるのは確かですが、もう一度テコ入れする価値はあるのではないかと思います。