概要
富士山世界遺産センターは静岡県富士宮市にある博物館・展示施設。富士山と富士を取り巻く歴史的文化が評価され、ユネスコ世界遺産登録となり、富士に関する情報発信を目的として整備されました。山梨県河口湖町には同一名称である富士山世界遺産センターが別にあります。静岡県内では2018年にオープンした静岡市清水の「日本平夢テラス」と並んで県内で話題の建築作品となっています。
設計・施工
設計は「坂茂建築設計」。135社が提出した県の設計プロポーザルにより最優秀者に選定されました。次点にはマウントフジアーキテクツスタジオが、その他一次審査通過者は伊東豊雄建築設計事務所、平田晃久建築設計事務所、石上純也建築設計事務所などが進みました。プロポーザルでは「富士の水の循環と反映」をテーマとする優れたアイデアと実現するための高度な技術を背景として、インパクトのデザインに仕上げた面が高く評価されました。
坂茂氏は高校卒業後、米の大学で建築を学び、実務も海外を中心として活動してきました。帰国後、国内で設計事務所を開設し実績を積み上げながら、慶応大や京都造形芸術大学などでプロフェッサーアーキテクトとして活動し、国内外で活動の幅を広げてきました。2014年には日本人として7人目となるプリツカー賞を受賞。2013年の伊藤豊雄氏に続いて日本人が受賞したことは世界における日本の建築デザイン界の重要性を示したと言えます。
坂茂氏は自身の著書にもあるようにとりわけ「紙の建築」による災害時仮設建築に注力してきました。東日本大震災では多くの人が家を失う中、体育館という避難所の中で紙パルプの柱梁フレーム布を架けて、最小限のプライベート空間を作り続けました。重大災害時にはより短い時間で、少ない人数で数多くのユニットを構築していくことが求められます。この「避難所用間仕切りシステム」はその後、国内では熊本地震や北海道の胆振地方地震などでも活用されたほか、海外の避難所などでも多用され高い評価を得ています。このような地道な活動もプリツカー賞の受賞ポイントとなりました。
施工は「佐藤工業・若杉組特定建設工事共同企業体」、展示空間は「丹青社」が担当しています。
建築の特徴
格子状に組まれた逆円錐形のプロポーションは際立った存在感を放っています。地上レベルでは直径約10m、頂部では約46mと楕円形に広がっています。建物前面に地下から引き込んだ富士の水が水盤となり、「逆さ富士」が「正富士」となり映る構図となっています。逆さ富士はデザインだけでなく、内包する展示動線と空間にこそ大きな意味があります。地上レベルからスパイラルスロープによって最上階まで達する延長190mの工程は最新のタイムプラス機能による「擬似登山体験」が可能となっています。水盤に張られた水は時間をかけて富士山から染み込んだ地下水が使用されているほか、展示空間の空調の熱源としても利用されており、建物運用にかかる省エネルギー化が図られています。プロポーザルで提案された技術が実現されました。
利用、アクセス
2021年1月現在
・利用料:常設展示300円。(学生無料)、企画展示は別途料金。
・営業・利用時間:9時〜17時(7月、8月は18時)、入館は閉館の30分前まで。
・定休日:第三火曜日(祝日の場合は翌日)と施設点検日
・アクセス
(電車)
JR身延線富士宮駅から徒歩8分。
(乗用車)
新東名高速道路新富士ICから約10分
東名高速道路富士ICから約15分
神田川有料駐車場が最寄り(駐車場台数:100台)